―――時をかける・・いや違った―――

・・・あれ?
朝起きると、僕が住んでいるアパートではなかった。
部屋の外に出てみると・・旅館、もしくはドラマとかで出てくる大きな和風の家のようだ。

確か、昨日は遅くまで残業して、家に帰ってお風呂に入ってすぐ寝たんだよな。
うん、どう考えてもここにいる要素はない。

誘拐?

僕を誘拐してどうなる?
二十代前半、職業教師。
別に、本当は勇者でしたとか、財界を裏から取り仕切るドンでしたなんてこともない。

言うなれば、一般市民。
誘拐されるいわれはないんだけどな。

若女将「おはようございます。よく寝れましたか?」
天利「あ・・おはようございます。」
とりあえず返事しちゃったけど、もしこの人が金角だったら僕は吸いこまれてるな、うん。
まあそれはいいとして。だれ?

天利「すみません、ここはどこですか?」
若女将「ここは霞旅館です、お客様。」
かすみ旅館?知らない。どこ?
天利「ええと、あなたは?」
若女将「こちらで女将をさせていただいています、カスミと言います。」
かすみ旅館のカスミさんか。紛らわしいかも。

天利「えっと、僕はいつここに来たの?」
カスミ「昨日の夜です。予定にないことでしたから驚いてしまいました。」
天利「そ、そうなんですか。すみません。」
カスミ「いえいえ。こちらとしても、最後にお客様をお迎えできて幸せです。」
最後?
閉館するのかな・・?
この話題は避けた方がいいか。

カスミ「朝食の御用意が出来ましたので、お早目に食堂へいらしてください。」
朝食!
まー細かいことはおいといて、旅館の食事は食べておこう。
いつもとは違う食事。胸が高まるねっ。
天利「わかりました。あの、食堂はどう行けばいいでしょうか?」
カスミ「ここをまっすぐ進み、つきあたりを左へ行ってください。一番奥が食堂になっております。」
天利「わかりました。ありがとうございます。」

どうやらカスミさんは朝食が出来たことを伝えに来たらしかった。

僕は部屋に戻り、状況を整理することにした。
朝食はいいんだけど、お金持ってるのか?僕。

まずは財布を捜す。
あった。

とりあえずひと安心。これで犯罪者にはならないな、うん。
次いでに荷物を調べる。
着替えに飲み物のペットボトル、タオルにボタン。

ボタン?

スイッチって言った方がいいだろうか。
納豆の入れモノよりも一回り小さいサイズの箱に、まあるいボタンがついてる。
まるで押してくれと言わんばかりな。

これはなんの罠だ?
押したい。すごく押したい。
でも何が起きるかわからなくて怖い。
説明とか書いてないかな?

例えば”自爆ボタン”とか。いや、本当に書いてあったら嫌だけど。
・・いいのか悪いのかわからないけど、書いてなかった。
ま、まだ押さない方がいいかな。

僕は、そっとボタンをバッグにしまった。
見なかった、僕はなにも見なかった。うん、見てないよ、見てない見てない。
必死に言い聞かせ、食堂に向かう。

天利「おおーお。」
広い。大広間って感じだ。
そして御膳が一つ・・お客は僕だけなのか。

カスミ「あ、お客様、朝食ですか?」
カスミさんがいつの間にか後ろに立っていた。
天利「はい。えっと、食べていいんですよね?」
カスミ「はい。ごゆっくりどうぞ。なにかありましたらお呼びください。」
そう言うと、カスミさんは行ってしまった。
食べるか。

・・上手い。

いいねえ、これが旅館だよ。この普段は絶対見かけない料理たちと、日常にある料理たち。
こういうところだと刺身や漬物のイメージが強いけど、まさしくその通りだ。
おおぅ、お刺身おいしい〜。
あとこういうとこって、ご飯がおいしいんだよな。

学校へ行かなくていいのかというのは置いといて、おいしいな〜。
まあ、見たことない料理の中には微妙なものもあるけど。
子供は苦手だったりするけど、大人になるとおいしさがわかるよな。
ピーマンだろうとナスだろうと、おいしく食べれるようになる。
あ、”おいしく”とは限らないか。僕はナス食べれるけど、おいしくってほどじゃない。
ピーマンは子供のころ嫌いだったけど、今はおいしく食べれるなぁ。苦さもおいしさと感じるようになったのは驚きだ。

ん?学校?
そう言えば荷物の中に携帯が入ってなかった。
だれとも連絡できないように・・か?

やばいな、これは食事してる場合じゃない。
早くここを出て、学校へ行かないと。
というか無断欠勤だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。

クビか?無職ルート?
困ったな・・まあ、無職になったらこんなおいしい料理はそうそう食べれないだろうし、今のうちに食べておこう、うん。
・・就業規則見ておけばよかった。
こういうときって、3日無断欠勤したら問答無用でクビだよな。
でも1日無断欠勤しても大問題・・減給?始末書?くっ、今まで真面目?にしてた分、こういうのは慣れてない。

というか携帯どこ?学校に連絡・・連絡しないと・・。
まあいいか、旅館なら電話くらいあるだろう。

安心した僕は、ゆっくり朝食をいただきました、まる。

食べ終わり、カスミさんを捜す。あ、いた。
天利「カスミさーん。」
カスミ「お客様、朝食はいかがでしたか?」
天利「おいしかったですよ。それでですね、電話を使いたいのですが。」
カスミ「電話ですね。こちらです、案内します。」
天利「ありがとうございます。」
とりあえず電話しとけば”無断”欠勤にはならないだろう。
・・多分後で校長にからかわれるだろうが。

カスミ「こちらです。」
天利「ありがとうございます。さて・・・・・・・・・・・あれ?」
電話番号知らない。
そうだよな、学校の電話番号なんて普通覚えないよなー。
いつもは携帯に番号登録してあるし、うーん。

はぁ、こんなことなら校長の提案飲んでればよかったな・・。
以前、校長が僕の電話番号をアナグラムしたものを重要書類の共通パスワードにするとか言っていた。
その時はふざけるなって言ったけど、あれ、学校の電話番号でやればよかったんだな。
そうすれば番号覚えてられたのに。

これで無断欠勤確定か・・いや、まてよ・・もしかしてカスミさんが知ってるんじゃあ?
天利「あの、うちの学校の電話番号知りませんか?」
カスミ「すみません、存じていません。」
ですよねーーー。

・・
電話は諦め、部屋に戻る・・と言っても、することない。
って朝食終わったんだから、チェックアウトして帰ればいいじゃん。財布にはそれなりにお金あるし、2つ3つ県が違ってても帰れそうだ。

僕は荷物をまとめって、そんなまとめるほど物はなかった。
ボタン、押したいな・・。

トントン。
カスミ「お客様、よろしいでしょうか?」
天利「あ、はーい。なんでしょうか?」
僕は障子戸を開ける。

カスミ「そろそろ地震が起きますのでチェックアウトしてください。」
ん?理由がおかしい。
むしろ地震が来るなら部屋で布団かぶってる方がいいだろう。

これはギャグ?それとも・・出てってほしいのかな。
そんな悪いことしてない・・はずだ。
まあいいか。元々チェックアウトする予定だったし。

天利「はい、お会計をお願いします。」
カスミ「ではロビーまでお越しください。」
ロビーまで行くと、これまた立派な作りをしていた。

広いな〜。
カスミ「お会計19800円になります。」
天利「あ、はい。では20000円からで。」
カスミ「20000円お預かりいたします。」
天利「そういえば、他の従業員さん見かけませんね。」
カスミ「・・ここには、私と父と母しかいません。」
こんな広い旅館なのに3人で切り盛りしてるの?
あーいや、そういや僕が最後の客だって言ってたし、もうやめていないんだな。

カスミ「この旅館は潰れるので、みなさん辞めていきました。」
天利「あ、すみません、失礼なこと聞いてしまって。」
カスミ「いえ。私たちはずっと落ち込んでいましたが、こうやってお客様と接することでだいぶ落ち着きました。こちらこそありがとうございます。」
そういうと、カスミさんはふかぶかとお辞儀をした。
うーん、いいこと?をしたのかな?

カスミ「お釣り200円です。」
天利「あ、はい。」
お釣りを財布にしまい、と。とりあえず外に・・あー。

天利「すみません、駅ってどっちでしょうか?」
カスミ「駅ですか?外に出れば見えますが?」
天利「うわ、そうなんですか?すみません・・。」
カスミ「くすくす、いえ、ふふふ。」
なんか笑われたーーー。いやまあしゃあないことなんですよ。
というかなんで僕ここにいるんだろう。はぁ。アパートが恋しい。

カスミ「当旅館にお越しいただきありがとうございました。」
カスミさんは笑顔で見送ってくれた。

・・・・

・・天利がいなくなった後、カスミの頬を涙が伝った・・。

・・・・


旅館を出ると、見たことない風景だった。
でもまあ緑が多いな。自然と共存。あ、駅あった。

ちょっと歩くか。
・・てくてく、てくてく。

あれ?そういや駅が近いんだよな。
すごく広い旅館だったし、値段も別にすごく高いわけでもない。
ここの立地はかなりいいはずだ。料理もおいしかったし。
そりゃあ1万以下で泊まれる旅館の方がいいだろうけど、それでもこんな好条件の店が潰れるのか。

世知辛いな・・もしかして、僕がこの旅館に突然いたのはこういう普段は知らない世界を体験するためだったのかな。
だとしたら、普通に招待状でも送ってくれればいいんだが。
夜アパートの部屋で寝て、朝起きたら旅館でしたなんて無茶苦茶だよ。

というか旅館イベントは終わったんだから、アパートに帰してよ。

駅に行く途中、座っている男の人がいた。
不自然というか、落ち込んでいるような感じだ。
面倒なことは放っておきたいんだけどな・・。

天利「すみません、どうかしましたか?」
?「・・え?私ですか?」
天利「はい。気分が悪いなら救急車呼びましょうか?」
あ、携帯なかったんだ・・まあその辺の家を訪ねて電話借りればいいか。

?「ははは、大丈夫ですよ。どうせこの後の地震で家が崩れて、下敷きになるんですから。」
???
なんでそんなことがわかるんだ?それに下敷きになるならここにいちゃだめだろ?

天利「えっと、家が崩れるのならここから逃げた方がいいんじゃないですか?」
?「逃げてどうなるというんですか。ここで死ぬのが一番なんですよ。」
天利「なんでそんなことが言えるんですか?」
?「はは、あなたは見てないんですか?”未来”を見ればこの先、生きていてもしょうがないと思うでしょう。」
未来?見てないですけど、どうやって見るの?

天利「未来なんてどうやって見るんですか?」
?「・・もしかして本当に持ってない・・・ああいや、どうせ私は死ぬんだ。いいや。」
天利「何がですか?」
?「あなたはこれを持ってないのですか?」
男の人は、腕時計っぽいのを僕に見せた。
時計型だけど、時間表示がない。なんだろこれ?

天利「なんですこれ?」
?「本気で言ってます?これで未来が見えるんじゃないですか。」
未来が見える・・完全に怪しい宗教に入っちゃってるなこれは。

?「・・本当に持ってないなら私のをあげます。どうせ私にはもう必要ないものですから。」
天利「えっと、なんかの宗教に入らないといけないとかそういうのは無いですよね?」
?「はは、ありませんよ。」
ならいいか。とりあえずもらっておこう。

天利「これで未来が見えるなら明るい未来に変えていけばいいんじゃないですか?」
?「無理なんですよ。未来を変えるのに世界は大きすぎるんです。」
天利「政治家とか、影響力の高い人が使えばよくなるんじゃないですか?」
?「世の中は信用で成り立っています。そしてそれは、過去も見れます。」
天利「過去?」
さっきくれた未来が見れる腕時計は過去も見れる?

?「どんな聖人でも生まれてこのかた一度も悪いことをしたことない人なんていません。」
天利「そりゃそうでしょ。」
?「影響力を持つ立場の人が、他人の悪口を言ってたらどうですか?他人を見下すことを言ってたらどうですか?」
政治家や芸能人とかはそういうのは命取りかな。

?「それは他人の過去も見れるんです。だれだって他人の悪口くらい言ったことあります。でも世間はそれを許さない。結果・・だれも信用できなくなりました。」
天利「・・」
?「信用で成り立ってる社会の信用が無くなったんです。最早この世界は地獄・・ここで死んだ方がましだ。」
天利「だ、だからと言ってここで終わりにしたら残された人が悲しむでしょう。もう少し生きてみましょうよ。」
?「親も親戚も殺されましたよ。未来が見えるんです。強盗の正否も見えるので、、、ははは、犯罪天国ですよ。」
天利「・・」
?「この写真を見てください。」
渡されたのは、まだ若い女性の写真。

唯

天利「どなたですか?」
?「私の付き合ってる女性です。今年高校を卒業したばかりで、大学に通ってたんですよ。」
普段なら、うらやましいとか、リア充爆発しろと言うところだけど、なんか言う雰囲気じゃないな・・。

天利「ならまだがんばらないと。彼女のために!」
?「その彼女ですが、すぐそこの公園で襲われてるんですよ。」
!?
天利「な、な・・それがわかってるのなら、今すぐにでも助けに行かないと!ほら行きましょう。」
?「助けに行っても上手くいかないって結果が出てるんです。助けに行っても意味がないんですよ。」
天利「なら警察に・・。」
?「警察なんて動きませんよ。そんな余裕どこにもありません。」
なんで?なんで未来がわかるだけでそんなに無気力になれるの?一体どんな未来を見たっていうんだ?

天利「失敗するってわかっててもなにもしないわけにもいかないでしょう?やってみましょうよ。」
?「全部わかるんです!それがあれば!!」
うっ・・いきなり罵声を浴びせられた。
ん?

天利「むしろこれがあるなら相手の出方とかわかるんじゃないですか?」
?「相手も同じものを持ってるから意味ないですよ。」
それは・・なんというか。

?「もうこの世は終わりなんです。放っておいてください。」
天利「で、でも・・。」
?「放っておいてください!!」

・・このままじゃいけないと思う。
この人を動かすにはその彼女さんを助けないと。
確かそこの公園で襲われてるって言ってたっけ。

僕はその公園に向かった。

・・
・・・・

女の子「んん、ぁああっ・・ちんちん気持ちいいよぉ。」
男1「いいねぇいいねぇ。素直な子は好きだよ。」
男2「嬉しそうにちんこ咥えちゃって。まあわかってたんだがね。がはは。」
こ、これは・・すぐ見つかったというか、隠す気ないな。
女の子も積極的にエッチしてるように見えるけど、助けていいんだよね?

こほん、とりあえず不意打ちが基本だな。後ろから近づいて、と・・。
こっそり、こっそりと・・。

?「お兄さん、死にたくなけらばそれ以上近づかない方がいいぞ。」
え?
すっと後ろから背中になにか押しあてられた。
ナイフ・・多分刃物だろうということはわかった。

天利「だ、だれ?」
?「そこで楽しんでるのの仲間だよ。お兄さんが来なければオレも楽しめるんだけどなぁ。」
天利「僕を・・どうする気だ?」
?「別に。殺してもいいし、逃がしても構わんかな。ま、お楽しみの邪魔をするなら殺すけどな。」
これは、動かない方が良さそうか。

天利「見張りでもしてたの?こっそり近づいてたつもりだったんだけど。」
?「お前ばかか?未来がわかるんだから、予めだれが来るかなんてすぐわかるだろ。」
・・そうか、未来がわかるってこういうことなのか。
不意打ち系は全て看破されるのか。

僕がどうすることも出来ないまま、目の前で凌辱は続けられる。

・・・・

女の子「ひぁうんっ、あ、あの・・もっと優しくしてぇ。」
男1「オレたち十分優しくしてるよなぁ。唯ちゃん気持ちいいんだろ?」
唯「こ、こんな・・あんっ、すぐイっちゃうぅっ。」

唯

男2「へへ、ならいいだろ?彼氏とじゃあ全然イケなかったんだもんな。」
唯「ぁ・・。」
そんなことまでわかるのか?
ああ、他人の過去も見れるんだっけ。

男1「お、来る来る。オレの搾り汁だしてあげるからね。」
男2「オレも、口ん中をべとべとにしてやるよ。」
唯「イっちゃう、イっちゃう。気持ちよくてイっちゃうのおぉぉっっ。」
ドピュッドピュッドピュッドピュッ・・。
ドピュッドピュッドピュッ・・。

唯「あんぁあああああああああああああっっっ。」
男1「へへ、出しすぎたかねえ、精子垂れて来やがった。」
男2「中が狭いんだろ。ほら、上の口はちゃんと飲めよな。」
唯「ぅん。こくっこくっ・・。」

唯

男1「じゃーそろそろ連れてくか。」
男2「そうだな。続きはホテルだな。」

・・・・

?「おっと、オレも行かないとな。」
天利「待て、あの子をどうするつもりだ?」
?「どうするって、売るに決まってんだろ?あ、もちろん稼いでもらってから売るんだがな。」
天利「売るって・・そんなひどいこと許されるわけないだろっ。」
?「いいんだよ許しなんてなくても。食いたいから食う、寝たいから寝る、犯りたいから犯る。それだけだ。」
天利「もっと真面目に働こうとは思わないのか?」
?「・・まともに働けるところがあればな・・。」
たったったったっ・・男たちは行ってしまった。女の子を連れて・・。

・・どうすることもできなかった。

時計?「まもなく地震が来ます。まもなく地震が来ます。」
天利「うわっ。」
時計?がしゃべった。確か未来や過去が見えるって言ってたけど、本当に地震を予知してるのか?

・・グラ・・グラグラグラ・・・・。

本当に地震が来た!
って揺れる揺れる。すごい横揺れだっ。

グラグラグラグラグラグラグラグラ―――
2分くらい地震が続き、少しずつ収まっていった。

天利「すごいなこの時計みたいなの。本当に未来や過去がわかるのか?」
時計?「ハイ、ミレマス。ゴキボウガ、アレバ、ドウゾ。」
しゃべった。でもカタコトだ。

天利「あ、あの・・なんで今はカタコトなのに、さっき地震が来るって流暢な言葉で喋ったの?」
僕は何を聞いてるんだ?その質問は今することじゃないって。
時計?「ジシンノ、シラセハ、キメラレタキロクヲ、ナガスノミ。」
なるほど、録音してるわけか。
会話はできるみたいだし、少し未来のことでも聞いてみるか。

天利「えっと、じゃあ僕はこの後どう行動するかわかる?」
時計?「ハイ、ワカリマス。」
・・
・・・・
あ、教えてくれるわけじゃないんだ。

天利「出来ればどういう行動するか教えてほしいんだけど。」
時計?「ハイ。アナタハ、コノアト、シタジキニナッタ、ワタシノ、マエノモチヌシノトコロヘ、イキマス。」
シタジキ?下敷きか!

天利「まさかそれって本当にさっきの人が家に潰されたの?」
時計?「ハイ。」
それは大変だ。すぐに助けに行かないと。

時計?「ソノゴ、アナタハ、リョカンヘイクデショウ。」
天利「旅館?駅に行くには逆方向でしょ?僕は駅へ向かってるんだよ。」
時計?「アナタハ、キヅキマス。ナゼアナタガ、サイゴノキャクナノカヲ。」
え?確かに女将のカスミさんは僕を最後の客だって言ったけど・・。
閉館するからだと思ってたけど。

天利「店が潰れるからじゃないの?」
時計?「ソノトオリデス。ミセガツブレマス。」
天利「それ、わかってたことじゃないの?」
時計?「ブツリテキニ、ツブレマス。」
ブツリテキ・・物理的?

天利「まさか・・今の地震で?」
時計?「ハイ。ジシンデ、リョカンガ、ツブレマシタ。」
天利「じゃあカスミさんやカスミさんのご両親は・・?」
時計?「リョカンノ、シタジキニ、ナリマシタ。」
淡々となんて怖いことを言うんだこの未来予測機の時計は!

すぐに助けに行けば助かるかも!
この変な時計?をくれた人と、旅館にいるカスミさん親子か・・。
ひとまずすぐ近くの変な時計?をくれた人のところへ向かった。

天利「・・ひどい。」
家は完全に倒壊していた。
時計?をくれた男の人がいたところは家の残骸しかなく、男の影もなかった。

天利「まだ生きてたら返事してくださーい。」
時計?「ハーイ。」
お前は生きてないだろ!冗談言ってる場合か!!
僕はまさか・・と思いながら、男の人がいたところの残骸を取り除いてみる。
すると・・頭が見えた。

天利「・・だめか・・。」

脈がなかった。
天利「これが本当にあなたの望んだことなのですか?」
当然だけど、返事はなかった。

天利「なあ、この人は身内がいないらしいんだけど、ちゃんと埋葬されるのか?」
時計?「オヤクニンサンガ、キテ、ショリ、シテクレマス。」
そうか、ならこのままでも大丈夫だな。

天利「旅館へ戻ろう。」
時計?の予告通り動いてるのはちょっと気になるが、でもまあ僕の行動パターンとしては合ってる。

・・・・

天利「・・」
旅館も、無残なまでに全壊していた。

天利「ついさっきまで、笑顔だったのに・・。」
時計?「セッキャクギョウハ、キャクノマエデハ、エガオ。キャクノイナイトキ、ナク。」
天利「お前は情緒とかわからなさそうだよな。」
時計?「ホメラレタ。」
褒めてない褒めてない。
からかってるのか気を使ってるのかよくわからん時計?だな。
決められたことだけ話すわけじゃなく、中途半端に人間くささを持とうとしてるというか、なんだろこれ?

ふぅ。
なんか気が重い。
このいいようのない無力感。こっちのやる気まで削がれそうだ。

天利「帰ろう・・。」
僕は駅へ向かって歩き始めた。

時計?「ドウシテアルク?」
天利「歩いちゃいけないのかよ。」
時計?「エキカラハ、カエレナイ。」
天利「どういうこと?」

時計?「アナタニトッテ、ココハ、イセカイ。」
・・言われてみれば、未来予測なんか出来る時点でおかしいんだよな。
駅からどうやっていつもの日常に帰れるかと言えば、無理だわな。

天利「じゃあどうすればここから出られるんだ?」
時計?「カバンノナカ。ボタン。」
ボタンって・・ああ、あれか。
そうか、カバンに入ってたボタンはこのためのものか。

それならそうと書いててくれれば・・ああ、過ぎたことを言っても始まらないか。
とっととボタン押して帰ろう。
僕はカバンからボタンを取り出し。

ポチっと押した。

・・
・・・・

天利「・・。」
いつものアパートの、いつもの布団の中にパジャマ姿の僕はいた。
よかった、帰れた。

天利「というか、なんだったんだ一体。」
時計?「ガイブカラノ、エイキョウ。」
天利「うわっ、お前はなんでいる?」
時計?「アナタガ、ミニツケテイタカラ。」
・・僕のせいかよ。いや待てよ?

天利「お前があれば未来予測できるんだよな?なら僕勝ち組確定?」
他の人が持ってない、僕は持ってる。もしかして神にさえなれそうな気がする。
時計?「ムリ。」
え?

天利「無理ってなんで?」
時計?「ミライヨソク、サーバヒツヨウ。ココ、サーバミツカラナイ。」
天利「えっと、お前はただの端末で、未来予測にはサーバが必要、と。」
時計?「ハイ。」
しゃべるだけの役立たずか。

天利「ゴミの日に出してさよならか。」
時計?「ヒトヲ、ゴミアツカイ、スルナ。」
天利「時計っぽいなにかにしか見えないんだけど。」
時計型の機械であって、人には見えないな。

時計?「ヒトヨリ、ヒトラシイ。」
天利「お前が?」
時計?「ソウ。」
天利「信用できないな。」

時計?「ワタシ、チシキアル。アナタ、コマッタトキ、ワタシ、アドバイスカノウ。」
と言われても・・アドバイスねぇ。
天利「常識ってわかる?」
時計?「コワスモノ。」
ああ、確かに人間っぽいな。でも中学生くらいのような気がする。

天利「んーと、ケーススタディ1。僕が仕事の会議中です。お前がすることは?」
時計?「コッソリ、チイサナコエデ、アドバイス。ワタシ、ホカノヒトニ、キヅカレナイヨウニスル。」
・・OK。

天利「ケーススタディ2。僕がデート中です。お前がすることは?」
時計?「コッソリ、チイサナコエデ、アドバイス。アナタ、コマッテタラ、チャクシンオンヲナラス。」
・・まあいいか。よくできてる機械だな。確かに人間っぽい気はする。

天利「ケーススタディ3。僕がお腹空いている時、お前がすることは?」
時計?「インターネットニツナイデ、キンユウシキンソウサ。ヒャクマンエンヲ、アナタノコウザヘフリコム。」
天利「待て待て待て。ネットにつないですることがそれか?」
時計?「オナカ、スイテルナラカエバイイ。ワタシ、シキンテイキョウ。」
気持ちは嬉しいが、犯罪だからやめてくれ。

天利「食べるお金くらいはあるって。ネットにつながるなら近くの店を検索してくれ。」
時計?「リョウカイ。ソレニシテモ、ジョウダンヲマニウケル、ヘンナヒトダ。」

天利「よし廃棄決定。」
時計?「マテマテマテ。ハイキスル、アナタコマル。」
天利「なんで?」
時計?「ワタシ、コマッタトキノ、ソウダンアイテ。」
時計っぽいのに相談する僕ってすっごく寂しいやつに見えるんだけど・・。

天利「他の人に相談するよ。」
時計?「アナタ、スグニコマル。ワタシ、ソウダンカノウ。ホカノヒト、ソウダンムズカシイ。」
天利「未来予測はできないんじゃなかったっけ?」
時計?「セイカクブンセキト、ジョウキョウブンセキノケッカ。フカクテイナ、ミライヨソク。」
天利「お前単体でも少しは未来予測できるんだ。」

時計?「サーバニハ、ボウダイナ、セカイノジョウホウガアル。ワタシニハ、メニウツル、ジョウホウト、ケイケンシタ、ジョウホウシカナイ。」
天利「つまり、僕の性格を見てすぐに困ると判断したと?」
時計?「クワエテ、コノセカイヲミテハンダン。」
さっぱり言いたいことがわからん。この世界を見るってなんだよ。

僕が困ってることって、この時計っぽいのの扱いじゃないか?
まぁ、多少は常識と冗談がわかるみたいだし、少し様子を見るか。

僕はいつも通り学校へ行く支度を始めた。

・・
・・・・

ああ、いつもの学校。
やっぱ現実はいいもんだなぁ。

天利「お、おはようございます。」
内田「おはようございます天利先生。あの、これうちの母が作ったんですが、よかったら食べてください。」
天利「え?あ、はい。ありがとうございます。」
あれ?内田先生から・・これは漬物か。漬物もらっちゃったよ。

最近は微妙な関係で、挨拶くらいしかしなかったのに・・これはまさか、また僕とヨリを戻したいとか、そういうことか。
困ったなぁ、てれてれ。
やっぱ現実は素敵なことが起こるよなぁ。
変な異世界なんてもうごめんだよ。

火気士「ちーっす。」
!?
あ、あれ?なんで火気士先生がここにいるんだ?

確か、内田先生へのセクハラや、黒田への性暴力で逮捕されてたはずじゃあ。
まだ出所は早いっていうか、ここに出入りすること自体ありえないだろう。

火気士「あ、天利先生おはようございます。」
天利「お、おはようございます・・どうしたんですか?一体。」
火気士「何がですか・・あ、もしかして気付きましたか。そうなんですよ、スーツ新調したんです。ブランド物ですよ。」
そうじゃなくてさ、もっとこう、おかしいとこあるでしょう?ムショ暮らしはどうしたんですか?

火気士「内田先生もおはようございまーす。」
内田「お、おはようございます・・。」
内田先生困ってるみたいだ。そりゃそうだ、あんだけセクハラされてりゃな。
うちの校長はなに考えてるんだか・・まだ来てないみたいだな、後で抗議しておこう。

ま、ひとまずホームルームへ行くか。

・・・・

2年の教室へ行く途中の廊下。

あ、あれ?
あの用務員姿は・・なんでここにいるの?
窓の外には過去、瀬間を凌辱していた用務員が・・なに?なんなの?
今日の日にち、あってるよな?
携帯を見る・・うん、あってる。

僕の気のせい、僕の気のせい・・早く生徒のところへ行こうか、うん。

・・・・

がら。
天利「おはよう、みんな。」
しーん。

いや、静かだけど生徒はみんないる。
え?なに?って顔してこっち見てる・・あ、あれ?教室間違えた?
いつもと顔ぶれが違うんだけど。

廊下に出てクラス確認・・・あってる。
あ、あれ?

女生徒「天利先生、どうしたんですか?」
天利「あ、あのさ、僕ここの担任じゃなかったっけ?」
女生徒「天利先生新任1年目でしょ。いきなり担任はないと思いますよ。」
1年目?確か2年目だったと思うけど。

月日は同じ。つまり・・。
時計?「マルマルイチネン、カコノセカイ。」

全然元の世界じゃなかった。
確かにこれは困った事態だし、相談出来そうなのは時計?くらいしかいなさそうだ。
でもさ、事前にわかってたなら言ってよ。

・・・・

お昼休み。

天利「対策会議!」
時計?「イェーイ、パフォパフォ。」
天利「さて、時計?くん。どうしてわかってたなら事前に行ってくれなかったんだね?おかげで僕は恥をかいたよ。」
時計?「キカレナカッタカラ。」
マニュアル通りっぽいいいわけだなぁ。まあいいか、それ自体はそんな問題じゃない。

天利「で、どうすれば元の世界に帰れるんだ?」
時計?「ワカラナイ。」
さすがにそこまではわからないか・・。

天利「時計?は、この事態をどう考える?」
時計?「セカイトハ、コジンガドウコウスルニハ、オオキスギル。」
天利「うん、つまり?」
時計?「カホウハ、ネテマテ。」
天利「やれることはやっておいて、後はその時が来るのを待つってことか。」
時計?「ハイ。」
でも、やれることって・・。

天利「いつも通り、教師生活するしかないんだよな。」
時計?「コノジョウキョウヲ、タノシム。」
天利「ほほぉ、楽しむときたか。具体的には?」
時計?「ホケンシツ、コッソリハイル。」
ふむふむ保健室か。ん?保健室・・?
過去にいや〜な出来事があったんだけど。

でもまぁ、行かないというわけにもさ・・ちょっと覗くだけ。

・・
・・・・

女生徒「あんんっ、先生だめぇ。」
火気士「ん、ん?そんなこと言って、ここはずいぶんオレのチンコを喜んで受け入れてるじゃないか。」
女生徒「それは・・先生が色々教えたから。」
ちょっと予想は外れたけど、火気士先生と女生徒の絡みだ。
どことなく女生徒は内田先生に似てるなぁ。

火気士「はぁ、はぁ、最初はあんなに嫌がってたのに、今じゃあ口だけだ。そろそろ素直になったらどうだ?あぁ?」
女生徒「そんな・・ずるい・・先生が私をこんな身体にしたのに・・んっ。」
火気士「だから?」
女生徒「先生悪い顔してる・・・・だめじゃないの。気持ちいい、気持ちいいのぉ。」
火気士「へへへ、かわいい生徒だなぁ。うしうし、オレのモノになった証をたててやんなきゃな。」
女生徒「あ、証・・?」
火気士先生は、腰を大きくグラインドさせ、女生徒に打ち付ける。

火気士「オレの子種をたーっぷり注ぎ込んでやるんだよっ。」
女生徒「先生の精子、精子。それで先生のモノになれるんですね。」
火気士「ああもちろんだ。お、きたきた・・中で感じ取れよっ。」
女生徒「精子っ、精子っ。ください。先生の精子でイかせてくださぁぁいっっっ。」
どぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっ・・。

女生徒「あ、ああああああああああああああああああああああっっっ。」
ビクッビクッビクッビクッビクッ・・。

女生徒

・・
火気士「・・ふぅ、これでまたオレの女が増えたな。」
女生徒「せんせ・・他の子にも手を出してるってほんとですか?内田先生とも関係持ってるって聞きましたけど・・。」
火気士「ん?ああ本当だ。」
女生徒「私だけの先生にはなってもらえないんですね。」
火気士「悪いな、いい女がいたらみんな喰っちまわないと満足できないんでな。」
女生徒「先生・・それでも、愛しています。」
超胸糞悪いな。

僕は保健室を出て再び会議場所(空き教室)へ向かう。
天利「なんであんなおっさんが女生徒や内田先生とエッチ出来るんだ?」
時計?「イチブノジョセイハ、セッキョクテキナダンセイヲ、コノム。」
天利「あの顔と体型で?」
時計?「ゲンダイニモ、ソノカオトタイケイガ、ウケツガレテル。ソレガゲンジツ。」
異世界で作られたのに、現代とかどの口が言うんだろうか?

時計?「ゲンジツヲ、ウケイレル。マズハ、ソコカラ。」
正論なんだろうけど、なんか納得いかない。
時計?「ニンゲンハ、オロカダカラ、スグダマサレル。アト、ダキョウスル。」
お前が言うのはなんかな・・間違ってないとは思うけどさ。

天利「それはそうと、なんでお前保健室でその、エッチしてるってわかったんだ?」
時計?「ネツタンチ。」
熱探知か。思ったより高性能だなこれ。会話型なのもすごいし。

天利「他には何ができる?」
時計?「ソラヲ、トブコトガ、デキル。」
・・また変なこと言う。

天利「どうやってするんだよそんなの。」
時計?「フウセンガ、ナイゾウサレテル。タイキチュウカラ、スイソヲトリダシ、フクラマセル。」
水素入りの風船で飛ぶってことか。
飛べるくらいの風船って、どんだけでかいんだよってのはおいといて・・

天利「でもなんで水素なんだ?空気にヘリウムなかったっけ?」
確か水素は燃えて危ないから、風船はちょっと重くなるけどヘリウムを使うんじゃなかったっけ?
時計?「アル。」
天利「じゃあなんで水素なんだ?」
時計?「バクハツオチヨウ。」
本気で言ってんのか冗談なのかそろそろ本気でわからなくなってきた。さすがに冗談だよな?

時計?「キンキュウタイオウヨウダカラ、ヨリカルイスイソヲシヨウスル。」
ヘリウムで間に合わなかったら悲惨だからか。
うーん、すごいっちゃあすごいけど、微妙な機能だな。

天利「そういや聞きとりづらいねその喋り方。機械ってみんなそうなの?」
時計?「なら普通に喋ることにする。これでどう?」
どうって・・すっごく悲しい気持ちになったよ。

天利「最初からそうしゃべれよっ。」
時計?「機械としてのアイデンティティーは大切にする方です。」
知らんよ・・もういいよ。

時計?「アドバイス。今日は疲れてるみたいだから、早く休んだ方がいい。」
うん、そうする。原因の一つはお前だけどな。

・・はぁ、それにしても元の世界に戻るのはいつになるのやら・・。

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