―――対策会議―――

瀬間「―――という名の、栗本くんをからかう会です。」
栗本「え?俺はてっきり、みんなが優しい顔で相談に乗るって言うから・・。」
この間もちに彼氏がいるか聞いたのとは別の日。
今日も瀬間さん、黒田さん、戸矢羅さん・・それと、ノノさん?がうちに来ていた。

母さんがあきれ顔だったのはおいとこう。
絶対勘違いしてるだろうけど。

黒田「まあまあ、相談にはちゃんと乗るから・・それに、今日はスペシャルゲストがいるんだし。」
栗本「スペシャルゲストって、さっき自己紹介してもらったノノさんのこと?」

ノノ「ノノさんなんて他人行儀な〜。ノノ様でいいよ。」
いや、一層距離が開きましたよ?
栗本「えっと、じゃあ、ノノ様?」

ノノ「様付けで呼ぶなんて、この人気持ち悪い。」
栗本「ひどいっ。というかどうすりゃいいんだよ?」
ノノ「まあつかみはこの辺にして・・」
全然つかんでないよ?

瀬間「打ち解けたところで、今日のメインを始めたいと思います。」
打ち解けたかどうかは置いといて、メインに入ってもらえるのは助かる。

瀬間「なんと、こちらのノノちゃんは未来を見れるんです。」
栗本「ああ、占い師さんでしたか。」
瀬間「・・いやいやいや、ほんとの未来が見えるんですよ。」
本当の未来って、、、じゃあ占いはうその未来?
まあ実際未来が見えるなら、わざわざ占い師はしないだろうけど。
占い師をするってことは、自分は未来が見えませんって宣言してることになるんだよね。

瀬間「いまいち信じてないって顔してますね。未来を見ることが出来ればもちさんを取り戻すこともできるというのに。」
栗本「・・・・と言われても・・・・。」
本当に未来が見えればそりゃすばらしいと思うけど、それが出来れば苦労はしない。
ギャンブルでも、商売でも、告白でも、なんでも未来を見てから行動できるじゃないか。

栗本「というか、もし相手も未来が見える場合、どうなるの?お互い未来を見合ったら”本当の未来”なんてころころ変わる気がするんだけど・・。」
ノノ「いわゆるパラレルワールドが出来るだけですよ。まあ、こちらとしては現在も過去も未来も同じもんですけどね。」
栗本「いやいやいや、違うだろ?」
ノノ「そうですね・・感覚としては、日本とアメリカだと思って下さい。」
?それだけだと意味がわからないんだけど。

ノノ「アメリカに行くためには船とか飛行機がありますよね。」
栗本「うん。」
ノノ「でも泳いではいけませんし、歩いても行けませんよね。」
栗本「うん。」

ノノ「過去や未来も同じです。歩いても船でも行けないだけで、いわゆるタイムマシンがあれば行けます。」
栗本「その感覚がわからないんだけど。」
ノノ「その昔、日本にとってアメリカは未知の世界でした。そりゃあ知らないんですから当然ですけど。」
ノノ「過去や未来も同じです。知らない、未知の世界なだけで、ちゃんと存在しています。」
栗本「で、それを見ることが出来るの?」

ノノ「はい。」

まあ理解はできないけど、なんか出来そうな気が・・。
って、
栗本「やばいやばい、危うく騙されるところだった。なんかそれっぽいから・・。」
どう考えても、未来とか過去とか見れるなんて詐欺か怪しい宗教話だな。

ノノ「むー、信じられないみたいだね。」
栗本「そりゃあ信じられる要素が無いからね。」
瀬間「ノノちゃん、殺っちゃっていいよ。」
おいおい・・それは言いすぎじゃない?

黒田「まあまあ、じゃあ試してみたら?実際に見てみたら信じられるんじゃない?」
栗本「お、俺はそんなに金持ってないから。」
ノノ「お金は取らないよ?」
栗本「じゃあ何を要求するんだ?」
ノノ「別になにも。」
なにも取らない?

栗本「じゃあなんでそこまでしてくれるんだ?」
ノノ「瀬間ちゃんから困ってる人がいるから助けてほしいって言われたから。」
栗本「・・そうだったんだ・・瀬間さん・・。」
俺、なにか勘違いしてたのかな。みんな俺のこと本当に心配してくれてたんだ。

ノノ「見苦しいし、未来を見る実験としてはぴったりだって。」
え?見苦しい?実験?
ノノ「未来を見ようが栗本くん・・だったよね、キミ次第だから。どうせ未来にそんな影響ないだろうって言われたし、まあいいかなって。」
栗本「いまいち喜んでいいかわかりません。」

瀬間「泣いて喜んでいいと思いますけど。未来なんてそうそう見れないし。」
まあそうだけど・・納得できない自分がいる。

栗本「でも、未来を見て安全策をとるのって、なんか卑怯な気がするんだけど・・。」
瀬間「勝てば官軍です。」
そりゃそうかもしれないけど・・。

瀬間「それに、女々しくもちさんの写真でオナニーする毎日は困るって。」
そりゃ困るかも・・ん?
栗本「んなこと瀬間さんにわかるわけないでしょう!」
まあ確かにしてるけどさ。

瀬間「いいですか、栗本くん、あなたは奈氷見ちゃんをこないだ家にあげました。」
栗本「戸矢羅さん?まあ、うん。それが?」
瀬間「盗撮盗聴されたと考えるべきですよ。」
べきですよ・・と言われても・・つーか、

栗本「戸矢羅さん、うちを盗撮してるの?」
戸矢羅「盗撮なんて野暮なこと言っちゃだめ。情・報・収・集。」
いえ、盗撮は盗撮です。

栗本「な、なんでそんなことするのさっ。」
戸矢羅「もし、瀬間ちゃんに手を出すことが無いように、弱みは常に握っておく。」
栗本「全部盗撮カメラを外してよっ。」
戸矢羅「どうしてそんなことを言うか理解できない。」
それはこっちが言いたいよーーー。

家に仕掛けられてた5台!?のカメラを回収してもらった。
俺が毎日もちでヌイてたの・・全部見られてたのか・・超ショックなんだけど・・。

ノノ「じゃあ準備いいかな?どのあたりの未来を見たい?」
栗本「んーじゃあ一年後くらい先かな?」
瀬間「すぐ先じゃないですか。百年後くらいにしてみたらどうですか?」
栗本「死んでる。関係者だれもいないから。」
ノノ「子孫なら見れるかもね。」
見てどうするよ。

栗本「一年後で。」
ノノ「はーい、じゃあみなさん目を閉じてください。」
俺は言われた通り目を閉じる。

ノノ「はい、開けてください。」
目を開けると・・え?

瀬間「え?どうして道の真ん中に?」
うん、俺たちは全員道路の真ん中にいた。

ノノ「ちょっと座標ずれちゃいました。」
ずれた?
すぐ近くに俺んちがあるから、ここが未来かどうかは別としてもワープはできてるよこれ。
催眠術・・じゃないよな?

黒田「ふぇ〜、ここが未来かぁ。あんまり変わらないね。」
ノノ「一年先じゃあそれほど変わりませんよ。」
黒田「それもそうだね。」

戸矢羅「ここには未来の私たちがいるの?」
ノノ「はい。会っても構いませんけど、今日の目的は栗本くんの好きな人ですから、会いたい場合は後でお願いします。」
戸矢羅「未来の瀬間ちゃん、はぁはぁ。はぁはぁ。はぁはぁ。」
・・ちょっとは落ち着きなよ。

瀬間「まずはここが未来かどうか確認しないといけませんね。コンビニで新聞でもチェックしてみますか。」
戸矢羅「・・一応あの家に栗本くんはいるみたいだね。」
戸矢羅さんが携帯テレビみたいのを見てるけど、あれでなにがわかるんだ?
どれどれ・・って、

栗本「なんで俺のオ○ニーシーンが映ってるわけ?」
戸矢羅「えへへへ。」
かわいくないよ。まだ盗撮カメラ残ってたのかよっ。

瀬間「ちょっと成長してますね。未来っぽいのは確かみたいです。」
栗本「ちょっ、瀬間さん見ないで。」
瀬間「見て減るもんじゃないですし。」
それなら瀬間さんの胸を見せてよ。減るもんじゃないでしょ。
・・とは言わないでおく。

黒田「ええと、とりあえずコンビニ行こうよ。日付見ないとはっきりしたことわからないから。」
瀬間「そうですね。」
俺たちは近くのコンビニに向かって歩き始める。

栗本「とりあえず、元の年代に戻ったら戸矢羅さんは盗撮器全部撤去するように。」
戸矢羅「うん、でも十個も外すのは面倒かも。」
まだそんなにもあんのかよ・・もしかして、もっと多くある?
頭痛くなってきた。
ちゅうか、十五個も仕掛ける方が面倒だったでしょ。最初から仕掛けないで!

瀬間「栗本くん、今ある分を外しても、また帰るまでに仕掛けられるから無駄ですよ。」
栗本「なんでだよ、仕掛けるなよ、永久機関かよ。」
戸矢羅「なぜ仕掛けるって?それは・・ロマン。」
いや、それ絶対犯罪者のいいわけにしかならないから。
あー頭痛い。戸矢羅さん危険すぎ。

栗本「瀬間さんは、よく戸矢羅さんと仲良くしてられるね。」
俺には無理だ。
瀬間「まあなんだかんだ言って、最後の一線は超えてないし。」
え?既に超えてない?
瀬間「だれにも気付かれずカメラを仕掛けてくれるから便利ですよ。栗本くんも、奈氷見ちゃんをもちさんちに連れてけば・・。」
な、なるほど・・って、
栗本「いや、ただの犯罪だし。」
なんて危険な申し出をしてくれるんだ。

黒田「あ、あったよ711。」
7−11なのに、24時間やってるコンビニが見つかった。
良かった、この辺は変わってないな。

中に入ると、涼しい風が俺たちを出迎えてくれた。
黒田「この清涼感がコンビニに来たーって気になるね。」
うん、ちょっと効きすぎた冷房とかくせになっちゃってるかな。

俺たちは入口近くに置いてある新聞を手に取った。
栗本「・・・・うぉっ、本当に年度が増えてる。」
ぴったり一年未来の世界だった。

ノノ「これで信じてもらえたかな?じゃあもちさんちに行きましょうか。」
栗本「え、と。行くのはいいんだけど、行ってどうする・・のかなぁ?」
ノノ「一年くらいだし、直接訪問して話してみたら?」
栗本「いやいやいやいや、それはちょっと・・。」
どうなってるかと思うと、怖い。

瀬間「ノノちゃん、それが出来れば今頃栗本くんは、もちさんといちゃいちゃできてますって。」
黒田「悲しいことに、それすらできないのが栗本くんなんだよ。」
ノノ「そうなんだ・・・・ごめんね、ノノ気付かなくて・・・・。」
栗本「な・・そんな憐みの目で見るなーーーーーー。」
ほんとにつらくなるから。

ノノ「なら中の様子だけ見ましょう。」
栗本「どうやって?」
ノノ「座標を移動して未来や過去へ行けるんだから、移動先の映像を見ることもできますよ。」
な、なんて便利道具・・ちゅうか、危険な道具だ・・。

黒田「お店の中で見てると邪魔になるし、外に行かない?」
瀬間「それもそうですね。あ、ペットボトル買おうっと。」
栗本「未来でそんなことしたら、おかしくならないの?」
未来が変わっちゃったりとか。

ノノ「別にそれくらいなら問題ないよ。世界征服しても未来への影響ないと思うし。」
そりゃすごいって、それは影響ありまくりだろ。

栗本「世界征服で影響無いってことはないんじゃない?」
ノノ「んーパラレルワールド上なら文句は出ないよ。」
栗本「パラレルワールドって、似た世界ってこと?」
ノノ「うん。パラレルワールドの数は無量大数をも超えるからね、その中のいっこで多少無茶しても気付かれないよ。しかもペットボトル買うくらいじゃ取り締まる方がコストかかりすぎるって。」
む、無量大数・・昔学校で習った単位の最大だったな。
それ以上の数もあるのか・・うーん、時間移動のルールは色々あるんだなぁ。

栗本「じゃあ、未来で銀行強盗して過去に戻るのはありなの?」
ノノ「あはは、それはコスト度外視でつかまえるよ。罰も大きいから気をつけてね。」
栗本「罰?し、死刑とか?」
ノノ「ううん、死んだ方がマシって思えるよ。」
栗本「・・・・じ、人権はどこに・・?」
ノノ「罪を犯したら罰があるのは当然だよ。でなきゃ刑務所に閉じ込めるのも死刑もだめになっちゃう。」
うーん、色々あるんだなぁ。

ノノ「それに・・機械の影響力も高まってるし・・。」
機械?
栗本「機械って、パソコンとかのあれ?」
ノノ「うん。自己学習もできて、今は一つの勢力になってるよ。人間と敵対するほどにね。」
こ、こわっ。
これは、未来の話だよな?さらっと重要なことに思えるんだけど。

栗本「そこまでくるとロボットだよね。ロボット三原則みたいなの無かったっけ?」
人間を傷つけないとか命令を聞くとかあったよね。
ノノ「みんながみんな、その通りに作るわけじゃないの。有能だけどルールを守らない人はどこにでもいるから・・。」
未来は、全自動でロボットが家事から仕事までしてくれる素晴らしい世の中・・というのを期待してるんだけど、そういうわけにはいかないんだなぁ。

栗本「それじゃあみんな生活するの大変だろうなぁ。」
ノノ「ううん。単純作業は全部機械がしてくれるし・・食物生産を機械による全自動になってから、人は働かなくても食べていけるようになったの。」
栗本「おお、それは素晴らしい。」
職が無くても恐れることはなさそうだ。

ノノ「メンテナンスも機械同士がやってくれて、生活水準はあがったんだけどね。」
栗本「なにか問題でも?」
ノノ「人間自体が堕落しちゃって。モラルは無くなるし考えは幼稚だし、機械の方が優秀になっちゃった。」
・・・・本当に大変なんだなぁ。

瀬間「ジュースとおにぎり買ったよー。」
黒田「みんなの分もあるから。」
ノノ「わーい、ありがとー。」
栗本「ご、ごめん。買い物させちゃって。」
黒田「いえいえ。心の準備は整った?」
準備・・・・・・あ、そうか、これからもちの未来を覗くんだよな・・。
うん、準備・・準備は必要だな。

もしもちが男と幸せな結婚生活をしてたら俺はどうすりゃいいんだ?

・・
・・・・

コンビニの外に出て、おにぎりを食べながらもちの家を覗くことに。
どきどき、どきどき・・ん?

瀬間「無人・・ですね。」
黒田「家具がないね。」
栗本「これは、引っ越し?」
黒田「みたいだね。一年は長すぎたのかな?」
ノノ「だね〜。仕方ないから、半年前を覗いてみるね。」
今から半年前ってことは、元の世界から半年後か・・うーん、わかりにくい。

栗本「というか、俺の部屋から覗いてりゃよかったような。」
ノノ「それだと未来だと信じてもらえなかったかもしれないからね。一回時間移動は必要だったの。」
なるほど。

画面が半年前を映し出す・・。
ノノ「・・半年前も引っ越した後だね。」
栗本「半年ってことは、結構近い将来に引っ越すんだなぁ。」
瀬間「なにか引っ越すような兆候なかったんですか?」
栗本「・・・・・・・・・・・ない。強いて変わったことと言えば、もちが仕事始めたことくらい。」
黒田「それで引っ越すってのも変だよね。」
まあ・・俺もそう思う。

ノノ「じゃあ3カ月戻るね〜。」
画面が3カ月前にさかのぼる。
そこでは、引っ越し業者らしき人たちが荷物の運び出しをしていた。

ノノ「ありゃ。このあたりで引っ越ししてたんだね。」
栗本「でも、もちや未々さんいないな。」
画面が家中を映し出すが、引っ越し業者しかいなさそうだった。

黒田「未々さんってだれ?」
栗本「もちの母親だよ。」
瀬間「家の人がだれもいないって変じゃないですか?それとも業者に全部任せる人だとか?」
栗本「ぐうたらしてる人だけど、そこまで変じゃないよ。もちだって、こういうときは手伝うと思う。」
ノノ「うーん、じゃあもう一週間くらい戻ってみるね。」
栗本「うん、お願い。」
一週間前に戻ると、そこはごく普通の光景だった。

黒田「当然だけど、まだ引っ越してないね。」
瀬間「ここから一週間後に引っ越すことになるんですか・・それにしては、荷物をまとめてる様子はないですね。」
そういやそうだな。
一軒家だし、結構荷物があるっぽい。
引っ越すつもりなら、普段使わないものくらい段ボールに入れとかないか?

ノノ「じゃあ別の部屋も覗いてみるね。」
台所、居間、トイレ、風呂場、廊下・・一階はだれもいないな。
二階では、未々さんの部屋に・・未々さんがいた。

瀬間「え・・これは・・。」
黒田「そんな・・。」
戸矢羅「うそ・・。」
ノノ「ありゃ。」
栗本「・・」
未々さんが、首を吊っていた。

生前と見比べるとなんとか未々さんだとわかるけど、苦しそうな表情・・顔面蒼白で汚物が垂れ流しになっていた。

黒田「・・ね、なにかの冗談・・だよね?」
ノノ「え?違いますよ。元の世界から三ヶ月後、この人は首を吊ります。」
瀬間「な、なんで?なんでこんなことにならなきゃならないんですか?」
ノノ「と、言われても・・もうちょっと時間を戻さないとわかんないよ。」
未々さんが首吊り?見た感じ自殺っぽいけど・・でも、どうしてこんな・・。
どくん、どくん・・動悸が激しくなる・・俺はなにも言えなかった。

黒田「と、とにかくもう少し戻ってみようよ・・あ、あのね、栗本くん。見るのつらいなら少し休んでる?」
栗本「・・あ、いや、大丈夫。最後まで見るよ・・。」
これ以上見るのはつらいけど、でも、これは俺の問題。みんなは付き合ってくれてるだけだから、俺がやらないと。

ノノ「じゃあもう一週間戻ってみるね。」
黒田「うん、お願い。」

・・
・・・・

御許未々「ちょっと、もう帰ってこないってどういうこと?」
御許もち「ごめんなさい、あんちゃんが来いって言うから・・。」
未々「あんちゃん・・って、海智くんのこと?」
もち「ううん、違う人。もう・・あのあんちゃんは・・もういいの。」
海智って、俺のことか。俺以外にも”あんちゃん”って呼ぶ相手がいるのか?

未々「もういいって・・」
もち「ごめんなさい、あたしもう行くね。今までありがとう・・。」
未々「ちょっともち、待ちなさい。まだ話は終わってないわ。」
バタン。

もちが玄関のドアを閉め、出ていく。
未々「もちっ。」
未々さんも追いかけドアを開けるが、もちは既にタクシーに乗っていた。

あ!
タクシーの中には、この間もちとキスをしていた男が乗っている。
どういうことなんだ?

タクシーは、未々さんが追いつく前に出発してしまった。

・・
・・・・

こくっ。
瀬間「・・つまりは、もちさんの家出が原因みたいですね。」
だれも言葉を発せない中、コーヒーを一口飲んだ瀬間さんが口を開く。
瀬間「あんまりよくない男のようですね。栗本くんの心配は当たってたということです。」
黒田「要は過去に戻ってあの男を始末すれば問題なしだね。」
ノノ「あ、それだと解決しないよ。」
瀬間・黒田・栗本「え?」

ノノ「もし過去に戻って歴史を変えても新たなパラレルワールドが生まれるだけで、元の世界へ影響を及ぼすことはないの。」
瀬間「じゃあ、過去に戻ってもやり直しはできないのですか?」
ノノ「うん。」
黒田「そんなぁ。」
栗本「じゃあ、未来は変えられないの?」
もちは悪い男のモノになり、未々さんは自殺してしまう・・のか?

ノノ「ううん、未来は変えられるよ。変えられないのは、過去。」
瀬間「過去は確定事項として扱われるってことなんですか?」
ノノ「うん。過去は既に起きた出来事だからね。でも未来はまだ不確定。未々さんが自殺する世界があれば、自殺しない世界もある。これからの行動でどっちに進むか決まるよ。」
栗本「じゃあ、もちを助けることが出来れば・・。」
ノノ「うん、今見た未来には行かないよ。」
パラレルワールドとして存在はするけどね。そうノノさんは言った。

黒田「う〜ん、過去を変えられないのは痛いなぁ。それが出来れば簡単そうなんだけど。」
ノノ「過去を変えるには予め世界の切りとりをする必要があるけど、容易じゃないよ。」
黒田「世界の切りとり?」
ノノ「えっと、セーブポイントを作るイメージかな。全世界の情報を保存しといて、やり直したい時にロードするの。」
それはすごいな。メガでもテラでもピコの単位でも保存しきれなさそうだ。

瀬間「ノノちゃんはそれ出来ないの?」
ノノ「うん、まだ理論レベルの技術だからね。ノノが知ってる人でそれをやったっぽいのは・・天利様くらいじゃないかな?」
栗本「ん?天利って、うちの担任の天利先生?」
ノノ「うん。そうだよ。」
・・・何もんなんだあの先生は。

黒田「天利先生すごい・・ってレベルじゃないよね。」
ノノ「パラレルワールドのどこかか、未来のだれかが天利様に接触したみたいなの。だれかまではわからないけど。」
瀬間「そのだれかが天利先生に色んな技術を教えたと?」
ノノ「教えたというより、天利様を利用してるみたいなのかな。天利様自身なんでかわからないみたいだし。」
・・・結構あちこちで未知の出来事が起きてんだな・・・。
意外とこの世界がバランスよくできてるのも、それが壊れるのも、こういうよその世界からの影響だったりして。

ノノ「話を戻すね。もう少し過去の様子を見てみよう。今度はもちさんを中心に映すね。」
まあそれでいいかと。
あの男が原因なら、もちの仕事先が怪しいもんな。

ノノ「じゃあさらに一日戻してみるね。今度はもちさんを追跡する形で。」

・・
・・・・

そこは、周りに家具が一切ない部屋だった。
白い背景となんかすごそうな機材たち。
もちはモデルやるって言ってたから、撮影現場か?

カメラをまわしてる人がいる。音声を録音する機材っぽいのを持ってる人もいる。
もちは・・カメラが映す先にいた。

もち

カメラマン「いやぁもちちゃんすごく綺麗だよ。もうエロくて最高っ。」
もち「えへへ、精液べたべた〜。」
男1「なあカメラマンさん、もう一発していい?」
男2「こんなエロい子見たことねえよ。」
カメラマン「もうちょっと待ってろ。もう数枚撮ったらみんなで犯ろうぜ。」

もち「あは、またエッチなことしてくれるの?」
男1「そうだよ。たーっぷりセックスしてあげるからね。」
男2「もっともーっと精子だらけにしてあげるよ。」
もち「わーい。もっと、もっとべたべたにして。セックス気持ちいいの。」

男1「いいねいいね。(それにしても、こいつ騙されてたっていつ気付くかな?)」
男2「(気付かねえんじゃね?セックスしか興味ないって顔してるぜ。)」
カメラマン「(社長も策士だよなぁ。わざときつくあたり、オレが優しくする。んで得た信用を利用して籠絡してく。完璧じゃね?)」
男1「(んなもんに引っかかるばかがいるからなぁ。普通社長がセクハラした時点で警察だよな。)」
男2「(元々気の弱そうな子選んだんだろ?もちろん顔もよくないとだめだけど。)」
カメラマン「(オレは胸を重視してるけどな。あの大きな胸を自由に出来るって気持ちいいんだよな。)」
男2「(わかるわかる。征服したって気になるよな。)」

もち「ねえ、早くエッチなこと・・して。」
男1「へへへ、ご要望みたいだし、していいですよね?」
カメラマン「ま、いいか。もう一発犯ってからまた撮影するか。」
もち「してくれるの?」
男1「ああ、楽しもうぜ。」
もち「うん。」

もち

・・
・・・・

あまりにもひどすぎる光景に、俺たちはそれ以上見ることができなかった。

瀬間「ふむ、これで”犯人はお前だ!”ができますね。」
栗本「え?」
黒田「”証拠はこのタイムマシンだ!”で解決だよ。」
栗本「ええ?」
戸矢羅「ありとあらゆる犯罪が一瞬で解決。ご家庭に一つタイムマシンをいかがでしょう。」
もうなにがなんだか。

ノノ「これでなんとかなりそうだね。」
栗本「え?まだ全然なんだけど。」
瀬間「敵を知り己を知れば百戦して危うからず。ですよ。」
栗本「孫子の兵法書だっけ、それ。」

瀬間「はい。他にも、敵を知らず己を知れば一勝一敗、敵を知らず己を知らなければ毎戦連敗。などありますよ。」
栗本「へぇ、そうなんだ。」

瀬間「そうなんだ・・じゃなくて、栗本くんはまず己を知らずにいますから。そこは自覚しましょうよ。」
栗本「え?自分のことなんだし、そこまで知らないわけじゃないと思うけど。」
瀬間「これは・・敗北フラグのような・・。」
ノノ「んー、じゃあノノが裏から手をまわす?」
栗本「あ、そうしてもらえると助かります。」
親切な人だなぁノノさんは。最初のつかみはあれだったけど。

瀬間「ちょっと待ったあああああああああああああああああああ。」
栗本「な、なに突然。」
瀬間「そこまでお世話しちゃったら、付き合いだした後もちゃんとやってけるか心配です。ここは栗本くんに任せる方向で。」
ノノ「なるほど〜。じゃあ手助けは控えるね。」
いや、控えなくていいんだけど・・。

栗本「じゃ、じゃあどうすればいいの?」
黒田「なら状況把握をしてみようよ。まずは目的から。」
栗本「んー、もちを救うことかな?」
瀬間「はぁ、ここは”もちを自分のものにする。”くらい言ったらいいのに・・。」
うるさいよ。まずは悲劇を起こさないことが重要。

黒田「目的が出来たらどう行動するかシミュレーションしてみようか。」
栗本「・・・もちに会って、話をする。かな?」
瀬間「ここで注意!もちさんの様子を見るに、薬を使われてる可能性があります。薬が効いてる間は説得が通じない可能性が高いです。」
栗本「えっと、なら薬が切れてる時に話せばいいってこと?」
瀬間「そうなります。となると、仕事のスケジュールを調べる必要が出て来ます。これは事前にやっておくリストに加えましょう。」
栗本「なんか本格的になってきたね。」

瀬間・黒田「他人事のように話すな!」

・・すみません。
瀬間「あとは、プライベートの方も調べた方がいいです。こっそり男に呼び出されてた・・なんてこともありますから。」
栗本「なるほどなるほど。」
黒田「脅しをかけてる可能性も十分考えられるから。話す場所は人目のつかない、できればホテルや第三者の家で行う方が安心だよ。」
栗本「俺やもちの家はだめなの?」
黒田「見張られてる可能性もあるからね。栗本くんがもちさんに接触したことがばれたら男たちも警戒するよ。」
瀬間「謀は密なるを以てよしとす、ですよ。男たちが気付いた時には既に王手をかけてなければなりません。」
お、お・・なんか二人ともすげえ・・。

栗本「それにしても、二人とも詳しいね。探偵でも目指してるの?」
瀬間「それは・・。」
黒田「まあ・・。」
瀬間・黒田「色々あったんだよ。」
よし、ここは聞かなかったことにしよう。聞いちゃいけないような気がするから。

瀬間「もちさんのスケジュールを確認して、男たちと会わない時を狙い接触する。ここまでOK?」
栗本「OKです。」

瀬間「では次、接触してからどうするかです。」
栗本「説得、だよな。」
瀬間「もちさんの性格を教えてください。」
栗本「んーと、まず思うのは真面目なところかな。家庭的で、だれにでも優しい性格してる。」

瀬間「あーはいはい、お腹いっぱいです。とっとと付き合っちゃえばよかったのに。」
瀬間さんはもちになにか恨みでもあるのか?まだ会ったこともないと思うけど・・。

黒田「ならちょっと面倒かもね。思いこんだら一直線って感じだから、中々説得に応じないかも。」
栗本「じゃあ説得以外の方法をとった方がいい?」
黒田「今回は警察沙汰になるから、もちさんを裏切らせないと一緒に保護されちゃうけどいい?」
栗本「なにか問題でも?」
保護されるなら救出されたと考えていいんじゃ?逮捕ってわけじゃなさそうだし。

黒田「栗本くんの前からいなくなる可能性があるよ。だって他の男に弄ばれたなんてうわさが流れたらその町にはいづらいし。」
栗本「それは俺が助けても同じじゃ?」

黒田「ううん、全然違うよ・・支えてくれる人がいるのといないのではね。」
な、なんか重い・・実体験?

ノノさんの情報を警察に届け解決することは可能。
だけど、それだともちは保護され会うことは困難になる。
だから関係者になる必要があり、そのためにはもちを説得するくらいしかできることはない。
・・と瀬間さんが補足してくれた。
まあ確かに俺が直接男たちをどうにかするのは無理か。

瀬間「ここは栗本くん次第ですね。ほんのちょっとの勇気でもちさんをこちら側に引き戻すことが出来ます。」
栗本「なんか回りくどい言い方してる気がするけど・・ほんのちょっとの勇気ってなに?」
瀬間「栗本くんの気持ちです。内に秘めてる思いをもちさんに全部話してあげてください。」
栗本「べ、別に何も秘めてなんてないから。」
瀬間「だから、栗本くんには勇気を出してほしいんです。好きな人と結ばれない苦しみは味わってほしくないんですよ。」
・・・こっちはこっちで重いなぁ。

俺の想いって・・要は、俺がもちのことを好きだって伝えればいいってことだろ?
それでもちが心変わりしてくれるのか?
もちはもう俺のことなんか、なんとも思ってないんじゃ・・・・。

瀬間「・・ここは栗本くんに委ねましょう。それくらいは自分でしてもらわないとさすがに・・。」
黒田「そうそう、がんばりどころだよ。”これを言っていいのか?”と思ったことをちゃんと言うようにね。」
んーーーまだ心の準備が・・。

栗本「まあ、俺が説得するのはいいとして、その後はどうすんだ?」
瀬間「あとは警察に任せた方が良さそうですね。まさか現場に突撃するなんて言いませんよね?」
言いませんよ。さすがにそれは危なすぎ。

瀬間「ではもう少し細かいところを煮詰めて行きましょうか。」
もちのスケジュールを確認するため、未々さんの協力をとりつけること。
もちと接触するのは男たちによる監視状況が把握できた後。
もちが会社から支給された携帯は盗聴されてる可能性があるから使用しないように、とか色々決めていった。
なんかすごいな瀬間さんと黒田さん。
気になる点があったら全部対処方法を決めていってる。

栗本「あ、監視状況って、どうやって調べるんだ?」
男たちが俺やもちの動きを監視してるって言っても、どう調べればいいんだ?
瀬間「そこは奈氷見ちゃんにしてもらいます。」
栗本「戸矢羅さんで大丈夫?」
瀬間「英雄は英雄を知る、ですよ。他人を観察することにかけては奈氷見ちゃんはエキスパートです。」
そこは英雄で例えることに違和感を感じる・・。
まあ任せて良さそうだけど。

瀬間「奈氷見ちゃん、お願いね。」
戸矢羅「了解。監視する側が監視される・・楽しそう。」
頼もしいです。でもできれば俺んちには何もしかけないでください。

瀬間「ノノちゃんは未来の確認をしてて。未来の状況が変わったら連絡お願い。」
ノノ「はーい。素敵な未来になることを期待してるよ。」
まあ、がんばります。

瀬間「私は奈氷見ちゃん、ノノちゃんの連絡を受けましょう。必要なら栗本くんに連絡しますから。」
栗本「ん、助かるよ。」
瀬間「黒田さんは栗本くんのアドバイス役になってて。必要があれば出しゃばってもいいから。」
黒田「おーけー。ダメだしだらけになりそうだけど、がんばるよ。」
すみません、お願いします。

瀬間「ちょっと心配ですが、ひとまずこれで行きましょうか。」
栗本「十分な気がするけど、なんかまずいことあるの?」
できればさっきみたいに問題点は対策打って欲しいんだけど。

瀬間「一応黒田さんが動けるようになってますが・・”もしも”が難しいんですよ。」
栗本「電話に出た時に言うセリフ?」
瀬間「・・・・やっぱ手伝わない方が良さそう?」
栗本「すみません、手伝ってくださいお願いします。」
ここは冗談を言う場所じゃないみたいだ。

瀬間「予想外の事態が起きた時に対処する人員が必要なんです。言うならば、予備人員。」
栗本「それ、必要なの?」
普段学校で予備の人なんて用意しないでしょ。

瀬間「失敗してはいけないことであればあるほど、セーフティーネットを複数用意するものです。」
栗本「はぁ。」
瀬間「”重要”と”最重要”の違いを理解できない人には難しいかもしれませんけどね。」
うん、全然わかんないです。

瀬間「まあいざとなったらお人好しさんに連絡すればいいでしょう。きっと助けてくれます。」
だれ?お人好しさんって?
黒田「ああ、確かに助けてくれそうだね。」
ん?もしかして俺も知ってる人?

瀬間「準備に時間をとられる方がリスクが高いですのでみんな、行動開始です。なにかあったらすぐ私のところに報告、連絡、相談するように。」
黒田・戸矢羅・ノノ「はーい。」
うう、みんな頼もしいよ。頭が下がります。

とにかくこれでもちを助け出す準備が整った。
後は動き出すだけ。
もち・・待っててくれ・・。










そういや、報告と連絡ってなにが違うんだろう?

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