―――三組の旅行者―――

がたんっがたんっ。
僕は電車に乗り、実家へ帰省している途中だ。

今は春休み―――ま、教師は生徒より短い休みだけどね。
そんな短い休みを利用して帰省。

夏と冬の休みの際は親がいなかったが、今回は絶対いると聞いたので顔見せが目的だ。
実家用のおみやげも持った。リンゴのケーキらしいけど、うまそうだ。。。

もう一つおみやげも持っている。
従姉妹の濡髪の家用だ。

天利「かわいい従姉妹は元気かな?」

がたんごとんっ。
それにしても、田舎に来ると都会の電車がすごいことがわかるよ・・。
電車に電光掲示板はないし、駅に着いた時の放送は声がちっちゃいし・・。
あ、マナーの悪い客がいるのはどこでも一緒だな。

大きな声で話している学生達がいるし、荷物を座席に置いているおっさんはいるし、
天利「・・ん?あれは・・?」
深く帽子をかぶり、サングラスとマスクの人が四人・・あれはこう、間違いなく犯罪者集団だろう。

出来るだけ見ないでおこう。
僕はあぶない集団と別方向を向き、お菓子を食べ始めた。



―――天利が帰省のため電車に乗る数時間前。

ここは天利のアパート前。
私の極秘情報によると、本日天利先生は実家に帰省するとの情報を得たり。

天利先生についていけばご実家へのルートが開き、
”あらあら偶然ですね。”と旅行先で先生と一緒の休日が可能です。

ふ、ふ、ふ。名付けて”先生の旅行先に偶然を装い出くわしご両親へご挨拶プロジェクト。”
長いので頭とお尻をとって”先ト”と名付けましょう。

え、私がだれかって?それは秘密です。
こういう時は全身黒タイツで表示されているはずです。
先生と婚約が成立したら真の姿を見せてもいいですよ。
その時をお楽しみに。


あ、ターゲット(天利先生)が部屋を出ました。
結構大きな荷物を持っているところを見ると、旅行であることは間違いないはず。
事前情報通り実家ならいいんですが。

ふ、ふ、ふ。さあ、ご実家まで案内してもらいますよ。

ぐいっ。
瀬間「ふわっ。」
突然後ろからコートを掴まれました。
しゃべっちゃったから私がだれかばれてしまったじゃないですか。

瀬間「ここからが重要なんですよ。邪魔しないでください。」
ノノ「瀬間ちゃんどこ行くの?」
あ、ノノちゃんです。

瀬間「しー。私は今、極秘プロジェクトを進行中なんです。今日はノノちゃんと遊んでる暇はないんです。」
ノノ「ぴこーん。ちょっと待ってて。」
ノノちゃんはもの凄いスピートで自分の部屋に戻っていった。
・・今、ジャンプでアパートの二階に届いた気がするけど・・気のせい?
これは、別の極秘プロジェクトが始まりそうな予感。

ああいけません。まずは当初の目的を達成させなければ。
色々なことに手を出すと全てが中途半端で終わってしまいかねません。
一つ一つ課題を解決させることが物事重要なんですよ。

ノノ「ただいま。」
瀬間「うわっ。なんですかその格好は。帽子にサングラス、マスクにコートって、変態じゃないですか。」
ノノ「・・瀬間ちゃんと同じ格好なんだけど・・。」
あれ?そう言われてみれば、そうでした。

瀬間「まさか、ついてくるって言いませんよね?」
ノノ「ノノの状況判断能力スキルLv2によりますと、糸利様のストーカー行為ですね。ノノはノノで別個に行いますから気にしないでください。」
・・まあいいでしょう、あんまりここでノノちゃんを構っていると天利先生を見失いかねません。
急ぎましょう。

天利先生は駅に到着。窓口で切符を買っているみたいです。
ノノ「いくらの切符を買えばいいのかな?」
瀬間「近くでどこまで行くか盗み聞きすればいいんじゃないですか?」
ノノ「・・でも、もう買い終わったみたいだけど・・。」
・・どうしましょうか?

あ、あれはっ。
?「さっきの人と同じ切符を一つお願いします。」
その手がありましたか・・って、あの帽子+サングラス+マスク+コートの人は・・黒田さん・・ですよね?

ノノ「変な格好の人がいる・・。」
私たちと同じ格好ですよ?
瀬間「私たちも同じ方法で切符を買いましょう。」
ノノ「了解。」

瀬間「この人と同じ切符を二つお願いします。」
黒田「あ、あれ?変な格好の人が二組?」
あなたと同じ格好ですって。

黒田「ど、どうして?」
瀬間「黒田さんも天利先生を追っているんですね。急がないと天利先生と一緒の電車に乗れませんよ。」
黒田「名前まで・・ストーカー?」
それはあなたです。

こうして私たち三人は天利先生追跡隊として活動を開始した。

○時△分。途中新幹線を経由した後、ローカル線に乗り換えました。
結構田舎みたいですね。結婚後は天利先生と田舎で暮らすのも悪くないかもしれません。

瀬間「ターゲットの様子はどうですか?我々は気付かれていませんか?」
黒田「大丈夫のようです。反対方向を見ているみたいです。」
ノノ「あのお菓子おいしそう・・ねえねえ、お菓子食べたいよ。」
瀬間「ターゲットが目的の場所に辿りついたら買ってあげますよ。」
ノノ「ほんと?約束約束。」
まったく、私とあまり変わらない年齢に見えるのに子供ですね。

□時×分。天利先生が電車を降りました。
どうやらここが目的地みたいですね。

ノノ「ここって、糸利様のご実家だね。」
・、・、・。

瀬間「なんですか?もう一度言って下さい。」
ノノ「ここは、糸利様のご実家。」
黒田「えーーーーー、知ってるなら先に教えてよぉ。後つける必要なかったよぉ。」
ですよねー。先回りも出来たはずです。

瀬間「ぐちぐち言ってもしょうがないです。次の計画に移りましょう。」
黒田「どんな計画?」
瀬間「偶然を装い道に迷ったと言って天利先生のお家にあがりこむプロジェクト。略して”偶ト”。」
黒田「変な略し方。」
それは言ってはいけません。

ノノ「んー。ノノはこっちに住んだことあるから普通に遊びに来たでいいと思うけど。」
黒田「私も独自の計画があるよ。意図的に訪問して天利先生の恋人だと言ってあがりこむプロジェクト。」
瀬間「・・略して”意ト”ですね。」
黒田「違うと思う・・。」

瀬間「では出発進行―――。」
ノノ「お菓子・・お菓子・・お菓子・・お菓子・・お菓子・・お菓子・・お菓子・・お菓子・・。」
瀬間「わかりました、先にお菓子を買いますよ。天利先生のご実家の場所はわかってますよね?」
ノノ「うん。実家も従姉妹の家も知ってるよ。」
従姉妹?確か従姉妹は結婚出来るはず・・うう、危険な情報です。

ノノちゃんのお菓子を買った後、天利先生のご実家へ訪問。
ただいま玄関の前。
ドキドキです。
黒田「ドキドキします。」
同感です。
ノノ「ドキドキするね。」
あなたは関係ないでしょう?

では、私が代表して・・ピンポーン。
・・ドキドキ。
・・・・ドキドキドキ。
・・・・・・ドキドキドキドキ。

・・返事なし。
あれ?帰省したばかりなのにご実家に人がいないって変じゃないですか?
ご飯でも食べに行ったんでしょうか?

黒田「うーん、数時間電車に乗ってしかも乗り継ぎあり。疲れて休んでいると思ったけど。」
ノノ「ノノも休みたい・・。」
瀬間「じゃあ少し休んでからもう一度来ましょうか?」
ノノ「鍵あるからここで休もうよ。」
鍵?
ノノちゃんが天利先生のご実家の玄関を開けて中に入る。

黒田「え?どうして鍵もってるの?」
ノノ「田舎はそういうの結構気にしないんだよ。」
鍵かけないって話は聞きますが、他人に鍵を渡す人はいないでしょう。

ノノ「さ、さ、入って入って。」
瀬間「まあ、天利先生をお出迎えってのも悪くないでしょう。」
黒田「うーん、怒られるような気がするよ・・入るけど。」
入ったのはいいんですが・・ここが先生のご実家?
整理整頓されていて、ゴミ一つ落ちていない・・だけど、なにこの変な感じは。

黒田「ねえ、ここ生活しているって感じがしないんだけど。」
そうです、人が生活してる形跡が無いんです。ホコリもありませんし。
どの部屋も整理整頓されてホコリが無く、ゴミ箱にもゴミはまったくない。
台所も使った形跡がない・・それなのに冷蔵庫は食品が入ってます・・まるでこれは・・。

黒田「だれかが急に用意した家って気がする・・。」
代わりに言ってくださってありがとうございます。

瀬間「ノノちゃん、ここが本当に天利先生のご実家なの?」
ノノ「そうですよ。なにか変ですか?」
瀬間「だって、だれかが生活していれば家は汚れますよ。ゴミ箱は空ですし・・まるでついさっき作られたみたいじゃないですか。」
ノノ「メモメモ。」
黒田「ええと、なにメモしているの?」
ノノ「違和感があったら直さないといけないの。でないと糸利様が本当に帰った時、疑問に思うでしょう?」

・・それは、どういうこと?
本当に帰った時って、、、まるで今回は帰ってないって言ってるような・・。

ノノ「準備が整ったら糸利様をここに迎えるの。それっぽい家とそれっぽい家族を用意して。」

黒田「え?なにそれ?怖い・・。」
うん、それじゃあ天利先生の本当のご家族は・・どこにいるの?

ノノ「まあまあ、テレビでも見て糸利様が帰ってくるの待とうよ。」
黒田「う、うん・・。」
そう言われても、いまいちくつろげない。
もちろん天利先生の家だからってわけじゃなく、ここが家に似ただけの建物だから・・。

ノノ「落ち着かないなら遊ぼうか、かくれんぼなんかどう?」
黒田「ま、まあ少しだけなら。」
じゃんけんをして私が鬼になったので、十数える間に他の二人が隠れます。

瀬間「一。」
隠れる場所は鍵のかかっていないところ全て。

瀬間「二。」
中から鍵をかけたりドアが開かないように押さえるのはNG。

瀬間「三。」
大きな声を出してはいけない。

瀬間「四。」
隠れている人を閉じ込めてはいけない。

瀬間「五。」
制限時間は二十分。全員見つけられれば鬼の勝ち。見つけられなければ鬼の負け。

瀬間「六。」
ここがよくわからない。トラップOK。

瀬間「七。」
他の人に助けを求めてはいけない。手伝ってもらうのはだめってことかな?

瀬間「八。」
カウントダウン二。

瀬間「九。」
カウントダウン一。

瀬間「十!」
スタート!

さぁ、みなさんをあっという間に見つけて勝利宣言しましょう。
実は数をかぞえている間も勝負は始まっているんです。
この部屋に隠れたかどうかがわかるから。

そして私は確信しています。
十数えている間に押し入れが開く音がしたことを。

まずは一人・・ということです。

がらっ。
瀬間「あれ?」
だれもいません。開け閉めだけして隠れたふりをされたのでしょうか?
ちょっと押し入れに身を乗り出して中を確認・・べちゃ。

瀬間「べちゃ?」
見てみると、それは緑色でゼリーよりもべちゃべちゃした・・気持ち悪いもの。

あうぅ、手を洗わないと・・。
洗面所へ行き、手を洗います。
水が冷たくて気持ちいいです。

・・手を拭いて鏡を見ると、、、私の後ろにだれかがうつってるんですが。
真っ青な顔をした髪の長い女の人・・。
ど、どなたですか?
一瞬で背筋が凍りつき、、、、、、、ふっと意識を失いました。

・・
・・・・

黒田「瀬間さん、瀬間さん大丈夫?」
瀬間「・・ん・・黒田・・さん?」
黒田「よかった、大きな音がしたから驚いて出て来ちゃった。」

ああ、私は気絶してたのか・・ってそれよりも。
瀬間「こ、ここには幽霊がいます。今すぐ出た方がいいです。」
黒田「・・瀬間さん、安心して。あなたは病院に行ってていいから。天利先生は私が世話するよ。」
瀬間「そうではなくてぇ。鏡を見たら女の人がうつってたんです。」
黒田「あはは、そんなことあるわけないじゃない・・あ、これ、シールが貼ってあるんだよ。」
シール?

確かに見てみると、さっき見た青白い女の人が壁に貼ってあった。
黒田「変わった素材だね。横からだと壁と同化して見えるからわからないんだよ。」
私の・・見間違い?
あんなにはっきりと恐怖を感じたのは久しぶりです。
こんな危険なシールははがしておきます。

黒田「でもこれで私は見つかっちゃったね。」
瀬間「そうです。かくれんぼ開始してどれくらい経ちましたか?」
黒田「十分くらいかな。」
とすると、後十分あります。

瀬間「ノノちゃんを見つけるまで私の闘いは終わりません。」
黒田「そう?暇だから私も探すね。」
見つかったら鬼側にまわってはいけないというルールはありません。OKです。

それにしても、トラップOKというのはこのことですか・・。
押し入れのべたべたしたのもその一つでしょう。

ここまで勝負を挑まれたら受けないわけにはいきません。
残り時間内までに見つけ出します。



――― 一方その頃天利先生は・・。

天利「いつもお世話になって悪いな。」
濡髪「いいんですよ。糸利ちゃんならいつでも歓迎するよ。」
嘘つきなうちの親がいつも通り?”家にいるよ”って言っておきながらいなかったので従姉妹の家に来たのだ。
夏の休みも冬の休みもお世話になったからちょっと悪い気がするけど・・。

ずず・・お茶を飲み、まぁいいかと思う。

濡髪「糸利ちゃんお昼食べてきた?軽くなにか用意する?」
うーん、軽く食べてきたけどちょっともらおうか。

台所で煮物とふのお味噌汁をいただくことにした。
白いご飯と漬物ももちろん標準装備ですよ。

天利「ここは変わらないな。」
濡髪「そうだね・・このまま時が止まればいいのに・・。」
・・ちょっと照れる。
まぁ、身内というのはいいもんだ。落ち着くよ。

濡髪「あ、そうだ。見せたい雑誌があるんだけど見てくれる?」
天利「構わないけど、なにかいい情報でもあるのか?」
濡髪「ふふふ、私が載ってるの。」
濡髪が雑誌に?うーん、何の雑誌だろうか?

天利「ちょっと見てみたいな。」
濡髪「じゃあとってくるね。」
どんな雑誌だろうか?地元の可愛い女の子・・とか?
台所にも雑誌が置いてあったのでちょっと見てみる。すると・・

天利「あれ?この雑誌に濡髪載ってるじゃん。」
そこには、地元の神社の特集で、巫女さんとして濡髪が載っていた。

・・あいつ、とりにいって見つからずにいるな・・。
仕方ない。食事中だけど濡髪のとこ行って教えてやるか。

天利「おーい、雑誌こっちあったぞー。」
声かけながら家の廊下を歩いていると、玄関に濡髪がいた・・男と一緒に・・。

濡髪「あ・・やだ・・糸利ちゃん見ないで・・。」
男の手が濡髪のスカートの上から大事なところを触っていた・・。

nukami

焔「お客さんが来てたのか。じゃあ濡髪、続きは夜にしような。」
そう言って男は帰っていった。

そういえば、冬に来たとき男がいたみたいだったけど・・。
天利「な、なあ・・。」
濡髪「う、うぅ・・。」
濡髪は走り出し自分の部屋に籠ってしまった。

あれからなにがあったんだ?前は男と、、まあエッチはしてたけどそんなに仲がよかったって感じじゃなかっただろう?
コン、コン。
濡髪の部屋をノックして様子を見る。
返事はない。

天利「な、なあ、部屋から出てきてくれないか?僕は別に濡髪がだれかと付き合ってても態度を変えたりはしないよ。」
しばらくの静寂の後、濡髪が部屋から出てきた。

濡髪「ほんとに変わらない?私がどんなふうになってても・・。」
天利「もちろん変わらないって。濡髪は僕の可愛い従姉妹だろう?」

濡髪「これでも・・?」
はらっ、濡髪が服を脱ぎ、肌があらわになる。
そこには一つの異変があった・・これは、まさか・・。

濡髪「そうだよ。私、妊娠してるの。今四ヶ月目。」
服の上からだとわからなかったが、濡髪のお腹には子供がいた。



―――話は戻って天利の実家では。

瀬間「ターゲットは二階にいると思われます。」
黒田「どうして?」
瀬間「一階なら黒田さんと同じように私が倒れた音で出てくるでしょう。」
黒田「なるほど。音の届かない距離にいるってことで二階ってことだね。」
その通りです。
律義に範囲内の全てを調べるのはこの状況ではふさわしくありません。
状況に合った策でもっとも確立の高い選択肢から選んでいきます。

・・二階にあがりましたが、こちらも部屋が結構ありますね。
黒田「あ、天利先生の部屋みっけ。」
瀬間「待ちなさい。」
黒田「みゅう?」

瀬間「私たちが一番探しやすい部屋に隠れるわけないでしょう?そこ以外に隠れるはずです。」
黒田「瀬間さんすごーい。参謀みたい。」
瀬間「あくまでも理論的に考えた結果です。先生の部屋は後でゆっくり漁らせてもらいます。」
黒田「・・抜け駆けはなしだよ?」

もちろんです。正々堂々と先生は私がいただきます。
・・それにしてもノノちゃんが隠れそうなところ・・か。
部屋は天利先生の部屋以外にご両親の部屋、空き部屋が二つ、物置が一つ、トイレが一つ。
ちらっと見たら空き部屋は人が隠れそうな場所はありませんでした。
トイレは狭いしそれこそ隠れられるところはありません。
後は両親の部屋か物置ですか。

黒田「二人いるし、後は手分けして一人一部屋捜す?」
瀬間「そうですね。そうしましょう。」

瀬間「では私は先生のご両親の部屋を捜します。(ご両親の情報があれば重要な武器になりそうです。)」
黒田「じゃあ私は物置だね。(天利先生のアルバムないかな?)」

さて、ご両親の部屋に入りましたが・・これまた生活感の無い部屋ですね。
タンスの裏にはまったくホコリが無く、日焼けの跡もない。
ノノちゃんが絡んでいるとは思いますが、こんな家を用意する意味がわかりません。

ま、それは後で考えるとしてまずはノノちゃんが隠れられそうなところを捜しましょう。
洋服ダンスに押し入れの中、ベランダや屋根裏も見てみましたがいませんね。
・・気になるのは、洋服ダンスの中まで無臭だったこと・・結構においが染み付くんですけどね、あそこは。

瀬間「黒田さん、そっちは見つかりましたか?」
黒田「あ、天利先生の小さい頃の写真があったよ。」
瀬間「なんですと?私にも見せてください。」
これは・・カワイイ。

瀬間「先生って昔は背が低かったんですね。」
黒田「小学生の先生泣いてるぅ。あーん、抱きしめてあげたいっ。」
瀬間「ちょっと、アルバム抱きしめたら私が見えないじゃないですか。」
黒田「ごめんごめん。あ、中学生の先生いっきに背が高くなってる。」
瀬間「今の先生を幼くした感じですね・・あれ?」
黒田「どうしたの?」

瀬間「先生しか写っていません。」
黒田「先生のアルバムだもん。」
瀬間「そうではなくて、ご両親が写った写真くらいあるでしょう?」
黒田「そういえば・・。」

ノノ「時間切れですよ。」

あ。時計を見ると二十分を超えていました。
ノノ「もう、ちゃんと捜してたの?」
瀬間「もちろんです。数々のトラップにやられました。」
黒田「これは恐ろしいトラップだね。もう少しもう少しと見ていたくなるよ。」

ノノ「あの・・アルバムなんて仕掛けてないけど・・。」
瀬間「そんなことわかっています。あの、高校時代で終わっていますが続き知りませんか?」
ノノ「糸利様本人に聞こうよ・・他人のノノはわからないよ。」
それもそうですね。天利先生を脅してでも確保しましょう。

黒田「ま、まあこのアルバムは刺激が強すぎるので私が預かりますね。」
瀬間「そんなこと言って持ち帰るつもりですね?私が安全のため預かっときます。」
黒田「瀬間さんもアルバムを手に入れたいだけでしょ?これは私のー。」
瀬間「違います、私のですっ。」

ノノ「糸利様のだと思うけど・・。」

・・ひとまずアルバムは共同管理という結論で落ち着きました。
地元へ帰ったらカラーコピーしてマイアルバムを作らなければ。
加工して私とのラブラブアルバムも。きゃっ、恥ずかしいです。

ノノ「瀬間ちゃん楽しそうだね。」
黒田「・・カラーコピーして自分の写真と合成加工しようと考えてるんでしょ?」
瀬間「ど、どうしてそれを・・。」

黒田「さあね。(私もそうするつもりだもん。)」

ノノ「お腹空いた。」
瀬間「じゃあお昼にしましょう。」
黒田&ノノ「さんせーい。」

・・
・・・・

ピザをとってワイワイお昼の食事会。
瀬間「そういえば、ノノちゃんはどこに隠れてたんですか?」
ノノ「空き部屋の隠し部屋にいたよ。」
隠し部屋・・見落としてました。

瀬間「ってそれはありなんですか?」
ノノ「ルールには禁止って書いてないから。」
そういう問題だろうか?

黒田「隠し部屋があることが驚きなんだけど・・。」
普通の家庭にはないですよね。

黒田「それにしても先生遅いね。いつ戻ってくるんだろう?」
瀬間「かくれんぼしている時にうすうす気づいてたんだけど、先生この家入ってない。」
黒田「え?」

瀬間「ノノちゃんの発言もそうだけど、先生がアパート出る時に持ってた荷物がどこにもない。」
黒田「えっと・・。」
瀬間「先生はここには来ません。」
黒田「じゃ、じゃあ先生はどこにいるの?」
瀬間「もちろん、ノノちゃんが知ってるはずだよね?」
ノノ「あははははははは、ふ、二人とも顔が怖いよ。もっとスマイルスマイル。」

黒田「どうやって口をわらす?」
瀬間「くすぐりが基本かな?」
黒田「私が逃げられないように押さえつけるから、瀬間さんくすぐりよろしく。」
瀬間「OK。」

じりじり、じりじり、私たちはノノちゃんに近づいていく・・。
ノノ「ちょ、ちょっと待って・・タイムタイム。」

私は黒田さんと顔を見合わせ・・こくっと頷く。
戦闘開始。

ノノ「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははは。」
瀬間「天利先生はどこにいるんですか?大人しく口をわるのが幸せの第一歩です。」
黒田「本当はこんなことしたくないの。でも先生の居場所を言わないと私たちも止められないの。」

ノノ「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。」
瀬間「もしも話したくなったら床を叩いてください。聞いてあげますから。」

バンッバンッバンッバンッバンッバンッ・・。
おちましたね?

瀬間「では聞きましょう。もし話さない場合やうそを言った場合はくすぐりレベルが1から3にアップします。」
ノノ「言う言うっ。言わせてください。」
黒田「さ、きりきり話しましょうね。」

ノノ「実は・・。」



―――再び天利先生の様子。

nukami

天利「濡髪・・妊娠って・・。」
信じられなかったけど、実際濡髪のお腹はふくらんでいた。
肥満とは違うだろう。お腹しか大きくなっていないのだから。

天利「父親は、さっきの男か?」
濡髪「・・うん。」
天利「経緯を聞いていいか?」

濡髪「うん。。。といってもお見合いで知りあって、いつの間にかこんな関係になっちゃったの。」
天利「叔父さん叔母さんは知ってるのか?」
濡髪「・・ううん、知らない・・。」

天利「この後どうするつもりだ?」
濡髪「わからない。」

・・どうすればいいんだ。
このままじゃだめなのはわかるけど・・。

天利「とにかくこのことは叔父さん叔母さんに言わないとだめだ。」
濡髪「言えないよ。どう言えばいいの?赤ちゃん作っちゃったって言うの?」
天利「それしか言えないだろ。他に言いようないだろう?」

濡髪「わかってる・・わかってるけど・・言えないの!!」

うーん、平行線なのはわかるけど・・。
天利「えっと、濡髪が言えないなら僕が伝えとこうか?」
濡髪「糸利ちゃんには迷惑かけられないよ・・。」

天利「濡髪は、、、濡髪はどうしたいんだ?」

濡髪「・・」
濡髪「・・わからないよ・・・・ほんとは、、、ほんとは糸利ちゃんと結婚して、二人でのんびり年をとれたらって・・。」

僕に出来ることって、なんだろう?
生徒に色々なことを教えていたって、完璧じゃない。
わからないこともたくさんある。道を誤ることだってある。

でも、それでも選ばないといけない。どんな道でも信じて進まないといけない時がある。

天利「なあ、僕と一緒に来るか?」
濡髪「え?」
天利「僕のアパートに・・その、二人で住まないか?濡髪と子供一人くらいなら僕の収入だけでなんとかなるから。」

濡髪は驚いたようだった。やがて目から涙が流れた。
濡髪「ううん、自分のしたことだから、私がなんとかしなくちゃ。」
天利「そうか。」
濡髪が”なんとかする”というなら僕が無理にどうこうすることはできない。

だけど、
天利「僕に手伝えることがあればなんでも言ってくれ。僕は、本気で濡髪の助けになりたいんだ。」
濡髪「・・なら、キスして欲しい。私が強くいられるように、糸利ちゃんの勇気をください。」
ごくっ。
しばらく合わないでいると女の子は大人になるんだな・・。
ちょっとドキドキしながら従姉妹の女の子にキスをする。

濡髪「今夜話しをつけるから。糸利ちゃんは普段通りにしてて。」
天利「ああ、わかった。でも助けが必要なら言うんだぞ。」
濡髪「うん。」
あ、ようやく少し笑顔になったかな。

まあ、任せるとは言っても、完全にあとよろしく・・じゃだめだろうな。
こっそり様子を見て、危なさそうなら助けに入ろう。
・・よくも僕の可愛い従姉妹に手ぇ出してくれたな。覚悟しておけ。



―――その頃、窓の外に・・。

瀬間「大変なところを見てしまいました。」
黒田「先生色々手を出してるんだね。」
ノノ「あうぅ、濡髪のことは知らない方がいいと思ったのに・・。」
ノノちゃんは独断で私たちを天利先生と会わせないようにしてたみたい。
それほどあの女の子が”特別”なんでしょうか?

瀬間「さて、あのシリアスムードのところに飛び込む気が出ないんですが、、、どうしましょうか?」
黒田「日を改める?」
瀬間「下手すると先生と入れちがいになっちゃうからそれは・・。」
黒田「私たちも協力する?なんか揉め事みたいだし。」

ノノ「うーん、元々ノノは濡髪とは敵対してたからあんまり協力したくないなぁ。」
瀬間「なに言ってるんですか?さっきのおっさんに協力するに決まってるじゃないですか。」
ノノ「え?」
黒田「さっきのキモいおっさんとあそこの黒髪の女の子がくっつけばライバルが一人減るということだね。」

ノノ「(濡髪、、、敵ながらかわいそうに。)」

瀬間「じゃあ天利先生の実家らしいところに戻って作成会議といきましょうか。」
黒田「おー。」
ノノ「えっと、微妙な気持ち・・。」

・・
・・・・

瀬間「さて、作戦本部へ来ました。みなさん目的は覚えてますか?」
黒田「先生と私のラブラブ大作戦。」
瀬間「粛清。」
黒田「え?」

ノノ「ねぇ、他人のご家庭なんだから、ノノたちが口出すことじゃないと思うの。」
瀬間&黒田「粛清。」
ノノ「しくしく。」

ま、他人の家庭というのは重々承知しています。ですが、、、
瀬間「そこをさりげなく私たちの望む未来へ誘導するのが目標じゃないですか。」
黒田「そーです。」
ノノ「・・まあ、ばれないのなら協力しますけど。」

瀬間「ではまずは状況の確認から。我々を除いた登場人物は三人。」
黒田「天利先生、黒髪の女の子・・濡髪さんだっけ?後はキモいおっさん。」
瀬間「はい、人間関係ですが・・。」
黒田「天利先生と濡髪さんは従姉妹同士。でもさっきキスしてたからそれ以上の関係かも。」
瀬間「そうです。そして濡髪さんと超キモいおっさんは身体の関係があるみたいですね。濡髪さんはおっさんの子供を身ごもっています。」

ノノ「(濡髪・・一途に糸利様を慕ってたのに、どうしてあんな男のされるままなんだろう?)」

黒田「天利先生とキモいおっさんは初対面みたいですね。」
瀬間「はい、では次に我々の目標です。」
黒田「濡髪さんとキモいおっさんの仲を進める。」
瀬間「そうです。少なくても今夜別れてもらっては困ります。」

ノノ「でも、どうするの?」

瀬間「まずは我々がいない場合のシミュレーションをしてみましょう。」
黒田「えっと、夜になるとキモいおっさんが来るんですよね。」
瀬間「はい。それを待ちうけるのは濡髪さんでしょう。もう付き合えないって意思を伝えるはずです。」
黒田「キモいおっさんは引き続き関係を求めるでしょう。成功すればよいのですが、失敗して付き合えなくなったら・・。」

瀬間「天利先生と?な関係になってしまいます。キスしていましたし、あれはただの従姉妹って感じじゃなかったです。」
黒田「キモいおっさんの説得が重要ってことだね。雲行きによっては天利先生も出てくると思うよ。」
瀬間「とすると、天利先生は舞台から退場してもらいましょう。濡髪さんは超キモいおっさんに逆らえないようにしてしまいましょう。」

ノノ「(なんだかひどい計画・・ノノたち悪人側だ・・。)」

黒田「んー、どうやって?」
瀬間「天利先生は私が持ってる睡眠薬で眠らせましょう。」
黒田「濡髪さんも眠らせちゃう?後はキモいおっさんの自由。」
瀬間「媚薬でもあれば楽なんですけどね。さすがにそんなの持ってないので。」
黒田「脅す?」

瀬間「まあ、弱みでも握れればいいんですが。」
ノノ「濡髪の?」
瀬間「いいえ、超キモいおっさんの。なにがなんでも濡髪さんと関係続けるように脅せるので。」

ノノ「(無茶苦茶だ・・全てが敵みたい。)」

瀬間「仕方ありません。これを使ってみましょう。」
ノノ「パソコン?」
瀬間「ええ、モバイルノートなのでパワーはありませんが、簡単なことなら出来ます。無線でネットもばっちりです。」
黒田「それで、どうするの?」

瀬間「リアルタイムの音声変換ソフトを使用します。」
黒田「んー、だれかの声で騙すってことだね。」
瀬間「そうです。これで神をかたります。」

ノノ「(ついに神様まで敵にまわした?)」

瀬間「巫女さんですから、低く響く声にすれば神の声と思ってくれますよ。」
黒田「それでキモいおっさんと付き合うように言えばいいんだね。」
瀬間「そうです。」

ノノ「濡髪・・ほんと、かわいそうに・・。」
ノノちゃんは甘いです。この世は弱肉強食。天利先生が一人である以上、結婚出来るのは一人だけなんです。
目の前にいる茶髪の女(黒田さん)は私と同じ条件なので私がより魅力的になれば余裕で勝てます。
ですが、従姉妹、、、従姉妹という特別な関係はどうしようもないんです。
これは相手が舞台から降りてもらわないと・・。

目的のためなら悪魔にだって魂を売ります。敗者は手を差し伸べてもらうことなんてないんです。
いえ、手を差し伸べてもらえないから敗者なんです。私は勝者を目指します。どんなことをしてでも。

計画は決まりました。
黒田さんが天利先生に睡眠薬を仕込み、私がパソコンで濡髪さんを騙します。
ノノちゃんは超キモいおっさんの動向をチェックしてこちらへ連絡する係。
携帯はサイレントにしましたし、練習もしました。

瀬間「では行動開始です。」
黒田&ノノ「はいっ。」



―――そんな計画が練られているとは知らない天利たちは・・。

濡髪「はい、糸利ちゃん。飲み物はお茶でいい?」
天利「ああ、濡髪も働いてばかりいないで食べなよ。」
濡髪「うん。」
日も暮れ、夕ご飯の時間になったのだけど、濡髪が料理を全部作ってくれてご飯も盛ってくれてお茶も入れてくれて・・。
まあ楽なんだけど、いたせりつくせりはなんか悪いなぁって思うんだよ。
僕の方が年上なのにってところもあるけど。年下の女の子に全部やらせるって・・しかも妊娠してる・・。

僕は鬼畜か?鬼畜なのか?

濡髪「私が好きでしてることだから糸利ちゃんは気にしないでいいよ。」
うわぁ、罪悪感がちくちくと僕の胸を痛み付けるんですがぁ。

濡髪「ね、またキス、したいな。」
仕方ないなぁ。
ん・・。
唇が触れるだけのキス。

濡髪「えへへ、糸利ちゃんのエッチ。」
ふぁ?キスしただけですよ?なぜに?

濡髪「えへへへ、夕ご飯食べよ。」
え?僕はエッチですか?どうなんですか?

濡髪「うん、お魚の焼き加減ばっちりだね。」
エエ、ソウデスネ。トコロデ、ボクハ、えっちナノデスカ?

・・
頭の上に?マークがついたまま夕ご飯を食べ終え、居間でゆっくりする。
天利「喉渇いたな。なんか飲むか。」
台所に行くと、僕の湯飲み茶碗にお茶が入っている。
僕の湯飲み茶碗に入ってるんだから、僕のだよな?

濡髪は台所にいないんだけど、いつ入れたの?
ま、いいか。いただこうか。

居間に持っていき、ゴクゴク飲む。
あちち、一気に飲もうとしすぎた。
喉渇いた時に冷たい水をゴクゴク飲むのとはちょっと感覚違うな。

天利「たまには仕事を忘れてのんびりするのもいいもんだ。。。」
畳の上で横になり一息つく。
狭いアパートと違ってここは広くていいなぁ。
暖房使って部屋があったまるのに時間がかかること以外は。

ん・・。
はぁ、心地いいなぁ。。
・・
・・・・

天利「ん、、、あ、あれ?」
まぶたが重い。目をこすって眠気を飛ばそうとする。
やべ、寝てしまってた。
濡髪は?あの男は来たのだろうか?濡髪はちゃんと別れを告げたんだろうか?

気になったので濡髪の部屋を覗きにいく。

・・
パンッパンッパンッ。
濡髪「あうっ、あうっ、あうぅん。」
そこでは濡髪と昼間の男が身体を重ねていた。
濡髪は男が腰を振るのに合わせて喘ぎ声をあげる。

嫌がっているようには見えなかった。
男から与えられる刺激に身体を震わせ濡髪もそれに合わせる。

濡髪「あんんっ、焔さま、焔さまぁ。」
焔「ようやく濡髪がオレとの結婚に同意してくれて嬉しいよ。子供と一緒に可愛がってあげるからな。」
濡髪「う、嬉しいです。」

じゅぷっ、じゅぽっ、じゅぽっ。
男のグロテスクなものが濡髪の中で出し入れされ、なんとも卑猥な音を出していた。
焔「ぐふふ、オレたちの結婚記念にたっぷり中出ししてやるぞ。」
濡髪「はい、焔さまの精子ください。」

ドクッドクッドクッドクッドクッ。
濡髪「あ、あああああああああああああああああっっっ。」

nukami

焔「ははは、たくさん出してやったぞ。ほら、綺麗に舐めて綺麗にするんだ。」
濡髪「はい。ぺちゃ、ぴちゅ、ちゅっ。」

・・
・・見るのがつらい・・。
僕が寝ている間に一体なにがあったんだ・・。

濡髪は断り切れなかったんだな・・でも、なにもあんなに気持ちよさそうにしなくても。
僕が出ていくチャンスなんてなかったよ。
・・くそっ、一番大事な時に僕は寝ていたなんて・・僕は、僕は・・。



―――計画が無事終了した瀬間たち御一行は―――

瀬間「ミッションコンプリート。」
ノノ「いいのかなぁ、いいのかなぁ、いいのかなぁ・・。」
黒田「終わった話なんだから、気にしなくていいと思うよ。」

ノノ「お二人は心が痛まないんですか?睡眠薬入れたり神をかたって巫女を騙したりして。」
瀬間「少しは痛みますよ。ですが、天利先生を手に入れるためにはライバルは邪魔です。別の人とくっついてもらう方が助かります。」
黒田「天利先生の日常はここではないし、濡髪さんも男の人と結ばれて不幸になるわけじゃないし、だれも不幸にならないよ。」

ノノ「(悪魔だ。悪魔がここに二人いる・・。)」

瀬間「あとはのんびり夕ご飯を食べてあそぼ。」
黒田「瀬間さんのパソコン見せて。なに入ってるの?」
瀬間「フリーソフトが大半かな。最近は経営ゲームがマイブーム。」
黒田「へぇ、そうなんだ。私はRPGばかりだよ。」

ノノ「(濡髪に同情する・・悪魔に目をつけられたのが運のつき・・私も気をつけよう。)」
ノノは、間違っても糸利様への好意は表に出すまいと、特にこの二人の前では気をつけようと心に刻んだ。



―――次の日の朝、濡髪宅。

天利「・・おはよう。」
濡髪「おはようございます。」
笑顔で濡髪は挨拶してくる・・。
昨日は途中で布団に逃げてしまい、あの後どうなったか天利はわからなかった。
だけど、途中までの状況を見ても自分が望む結果にはなっていないことはわかる。

天利「・・なあ、濡髪・・。」
濡髪「糸利ちゃんは朝目玉焼き食べる?昨日の焼き魚もあるけど。」
天利「えっと、目玉焼きで。」
濡髪「了解。おいしいベーコンエッグ作るね。」
・・きっと濡髪は昨日の話題を出してもらいたくないのだろう。
でも僕は大人として、見て見ぬふりをするわけにはいかない。

天利「濡髪っ、昨日の話だけど・・んんっ。」
ぬ、濡髪?
突然キスされた・・。
しばらくそのまま二人の時間が止まり、、、濡髪の方から唇を離した。

濡髪「・・ごめんなさい。その話は、しないで・・。」
・・わかったよ。もうその話はしない。
でも、放っておくわけにはいかない。

天利「また来るよ。次来る時は五月になるから。」
濡髪「うんっ、待ってる。」
一年間、僕は先生として生徒と接して来た。
それなりに成長したかな?って思ってた部分もあるけど、まだまだ僕なんかじゃ自分の教科を教えるのが精一杯。

もっと、もっと僕も成長しないといけない。自分自身のため、子供たちのため。
つらいのを我慢しているだろう濡髪の後ろ姿を見ながら、僕は決意を新たにした。



―――数日後、帰りの電車。。。瀬間たち御一行。

瀬間「うーん、先生真剣な目で本読んでますね。」
黒田「先生格好いいよ。写真撮りたいな。」

ノノ「あんまりじろじろ見ていると見つかるよ?」
瀬間「うぅ、次は先生の隣に座れるようにならないと。」
黒田「私も隣に座って来たいな。」

ノノ「(右隣と左隣が埋まった・・糸利様も大変ですね。)」

瀬間「それにしてもノノちゃんひどいです。かくれんぼの時あんな仕掛けするなんて。」
ノノ「あのねばねばのこと?回収した時だれかひっかかった後があったけどやっぱり瀬間ちゃんかかったんだ。」
瀬間「そっちじゃありません。鏡に幽霊が写るようなシールを貼ったじゃないですか。」
ノノ「幽霊が写るシール?してないよそんなの。」
・・ええと、私がしていないのは確実です。私自身のことを間違えるわけありません。
ノノちゃんの言っていることが正しいと仮定すると、仕掛けられる人は残り一人。

私は黒田さんの方を向く。
黒田「え?私も知らないよ。あんなの怖くて仕掛けられないって。」
つまり、ええと、その・・。

本物がいたってこと?
ノノ「瀬間ちゃん顔真っ青だよ?」

黒田「だれも仕掛けてないってことは・・本物の幽霊?」
瀬間「そ、そんなはずはありません。きっと最初から貼ってあったんです。」
ノノ「残念だけどそれはないよ。到着した時に手洗ったでしょ?あの時幽霊なんていなかったもん。」

じゃあ、ほんとに・・。
ノノ「きっと瀬間ちゃんたちが悪いことするってわかってて、警告しに来たんだね。あーあ、無視しちゃった。」
瀬間「あう、あぅ、私、呪われちゃったの?死んじゃうの?もう手遅れなの?」
黒田「瀬間さん泣きそうだよ。はい、ハンカチ。地元戻ったら神社行ってお祓いしよう。私も不安だから。」
瀬間「うん、うん。絶対行こうね。約束だよ。」
黒田「うん、約束。」

ノノ「(うーん、怪奇現象なら情報入るはずなんだけどなぁ。瀬間ちゃんも黒田さんも嘘言ってるようには見えないし・・はてな?)」



―――瀬間たちから少し離れたところに三組目の旅行者がビデオカメラを構えていた。

戸矢羅「泣きそうな瀬間ちゃんかわいい。」
悪いことする悪女な瀬間ちゃんもいいけど、怖くて不安で泣いている瀬間ちゃんもかわいい。

戸矢羅「はぁ、はぁ、はぁ。盗聴器いい仕事するわぁ。瀬間ちゃんの泣き声ばっちりよ。」
実は洗面所に青白い女の人のシールを仕掛けたのは戸矢羅。
瀬間の悲鳴が聞きたくて仕掛けたけど、その時は声を上げずに気絶したのでちょっと不満げでした。

戸矢羅「でもまあこういうのもいいかぁ。はあはあ、神社でもこっそりビデオ撮らないと・・電池はまだ大丈夫。瀬間ちゃんのお祓い姿・・レア!」



こうして三組の旅行は各々感情をめぐらせながら終わりを告げた。
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