―――お見舞い―――

・・
・・・・
・・・・・・
・・不完全燃焼中・・。

・・僕は今日、内田先生を助けるはずだった。
いや、まあ、結果的に内田先生は助かったのだが・・。
内田先生にセクハラしていた火気士先生と士巻先生は警察に連れていかれた。

というか、連れていかれていた。
僕が内田先生と校長室に行き、話をしようとしたら校長の方から話を受けた。
火気士先生と士巻先生が色々悪さをしていたことは既に校長に耳に入っていたらしい。
この夏休み中、生徒のいない間に片付けよう・・ということで、新学期の今、既に問題は解決していた。

あれ?僕が内田先生がどれだけ苦しんでいたか、火気士先生と士巻先生が
どれだけひどいことをしていたか一生懸命訴え、解決に取り組み、内田先生にかっこいいところを見せる予定が・・。

校長から解決したことを聞いた後、内田先生からは一応事情を聞きたいということで
僕だけ校長室から出た。

僕が出来ること・・それは内田先生の代わりにホームルームに出ること・・かな?

ガラッ。
教室のドアを開け、生徒にホームルームを始めることを伝える。
戸矢羅「あれ?内田先生は?」
天利「今ちょっと用事があってな。僕が代わりにホームルームを行う。」
戸矢羅「新人教師ごときが偉そうに担任づらか?いい根性だな。」
・・ん?
天利「えっと、まあ代理程度なんで・・。」
戸矢羅「朝から若い女を上から見下して楽しいですか?」
天利「・・出席とるぞー。」
戸矢羅「無視か?無視ですか?なるほど、図星・・ということか。」

あれ?戸矢羅ってこんな性格だっけ?
授業を受け持っているし、話したこともあるが、もっと温厚だったんだが・・?

生徒「先生、気にしなくていいよ。戸矢羅ちゃんはね、瀬間ちゃんと一日以上会えないとこうなるの。」
・・どうして僕の周りは変わった人ばかりなんだ?ん、あれ?

確かに瀬間はいなかった。あ、黒田もいない。

天利「瀬間と黒田がいないが、何か聞いてるか?」
戸矢羅「ああ?先公が知らんでどうする?仕事はちゃんとしているんですかぁ?」
いちいち人を非難するいい方だなぁ。
生徒「んー、特に聞いていないよ。」
天利「そうか・・。」
戸矢羅「そうか・・じゃねえよ。今すぐ瀬間ちゃんの安否を確認するのが普通じゃねえのか?」
黒田はどうでもいいのか?こいつは。
天利「えっと、わかったわかった。出席とったら家に電話かけるから。」
戸矢羅「家にはだれもいねえよ。朝、瀬間ちゃん家に行ったんだけど、だれも出なくてよ。」
天利「そうなのか。わかった、見た所瀬間と黒田以外はみんないるみたいだし、すぐに連絡とるよ。」
戸矢羅「とっととそうしろ。」
天利「わかったから。じゃあホームルーム終了。解散。」

僕はホームルームを終えて、職員室に戻ってきた。
職員室には内田先生がいた。
内田「天利先生、ホームルーム代わりに出てくださってありがとうございます。」
天利「いえいえ、そのくらいいつでも言って下さいね。」
内田「はい。」
天利「あ、そういえば瀬間と黒田が来ていませんでしたが、何か聞いていますか?」
内田「あ、え?いえ、特に聞いていませんが・・。」
天利「そうですか・・じゃあ家に電話してみます。」
内田「お願いします。私はこれから授業がありますので。」
内田先生は職員室を出ていく。

さて、僕は一時間目授業ないし、まずは瀬間の家に電話してみるか。
ぷるるるる、ぷるるるる、がちゃ。
瀬間の母「もしもし、瀬間ですが。」
電話には瀬間のお母さんが出た・・だけど、変なことがわかった。

瀬間は家を出た。もちろん学校へ行ったらしい。

これが意味することは・・やばい、事件か?
瀬間のお母さんとの電話を切り、周りを見回す。

校長がいた。
天利「校長、大変です。」
米他(校長)「よし、私は耳を塞ぐことにしよう。教頭へ言ってくれ。」
・・
米他「冗談だよ。で、何だ?」
僕は瀬間のことを話した。学校にはいないのにお家に人が学校へ向かったと言ったことを。
米他「わかった、手の空いている先生に調べてもらうことにしよう。キミも一時間目は空いてたな?」
天利「はい。あ、でもその前にもう一人所在を確認しないといけないんです。それから僕も調べることにします。」
米他「よし、そうしてくれ。」
校長は手の空いている先生方に声をかけ始めた。
僕も黒田に電話して、その後瀬間を捜しに行こう。

ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる、がちゃ。
黒田「もしもし、黒田です。」
この声、黒田か。
天利「黒田か?天利だけど。」
黒田「あ、天利先生?」
天利「今家にいるのか?大丈夫か?何かあったか?」
黒田「あ、えっと、少し熱があって・・。」
天利「お家の人はどうした?」
黒田「仕事でいないの。」
天利「一人だけか?」
黒田「・・うん・・。ねえ、先生。」
天利「なんだ?」
黒田「一人だと怖いの、寂しいの。来て欲しい・・。」

・・う・・行ってやりたいのだが、授業もあるし、瀬間を捜さないといけないし・・。
黒田「えへ、冗談だよ。お仕事がんばってね。」
天利「黒田・・ごめんな。」
黒田「ううん、私が無理言っちゃっただけだから。」
天利「お大事にな。」
黒田「うん。ありがとう、先生。」
黒田との電話を切る・・黒田・・。

米他「このまま黒田の家に行ってやりたい。」
天利「わっ、校長。」
いつの間にか校長が後ろに立っていた。
米他「キミの心を読んだつもりだが?」
天利「な、何言ってるんですか。家庭訪問じゃあるまいし・・。」
米他「私が何も知らないと思うか?」
天利「え?」
米他「火気士先生と士巻先生のことは知っているな?」
天利「・・ええ。」
内田先生や黒田にエッチなことをしていたことだろう。
米他「ここでの話は外に漏らすなよ。」
天利「は、はい。」
米他「・・彼らは黒田くんにまで手を出していたそうだ。」
天利「・・」
知っています。とは言えないな。
米他「被害を受けていたのは内田先生だけじゃなかったんだ。」
天利「そうでしたか・・。」
米他「黒田くんは傷ついている。傷つけたのは我々教師だ。」
天利「・・はい。」
米他「キミが黒田くんに電話をしているのを聞いて心配になってな、聞き耳してしまったんだが・・。」

米他「キミはずいぶん慕われているな。」
天利「えっと、そう見えますか?」
米他「ああ。それでだ、頼みがある。」
天利「何でしょうか?」
米他「今から黒田くんの家に行き、看病してやってくれ。」
天利「瀬間はどうするんですか?授業はどうするんですか?」
米他「瀬間くんは他の先生方に捜してもらう。授業は自習だ。キミは黒田くんを助けてやってくれ。」
天利「ですが・・」
米他「黒田くんが・・うちの生徒がこのまま傷ついたままだなんて、私には耐えられないんだ。」
天利「・・」
米他「黒田くんがキミになぐさめてもらいたいと言うのなら、その気持ちに応えてやってくれ。」
天利「校長・・わかりました。今すぐ行ってきます。」
米他「ああ。だがな、必要以上になぐさめるな。」
天利「え?」
米他「男と女の関係にはなるなと言っているんだ。」
天利「黒田は熱を出しているんですよ?そんな状態で何かすると思っているんですか?」
米他「もちろんだ。」
・・
米他「冗談だよ。念のためだ。」
天利「校長、冗談がきついです。」
米他「キミはまだ新任とはいえ、一生懸命やってくれていることはよく知っている。別に心配しとらん。」
校長はとっとと行って来いと言ってくれた。
ありがとうございます、校長。

・・
僕は黒田の家に到着した。
すぅーーー、はぁーーー。深呼吸して・・チャイムを鳴らす。
ピンポーン。

・・
黒田「・・天利先生?」
ドアから覗いたのだろう。慌ててドアを開けてくれた。
黒田「先生、どうしたんですか?」
天利「ん・・まあ、見舞いかな?熱はどうだ?起きてつらくないか?」
黒田「えっと・・。」
天利「上がっていいか?」
黒田「・・うん。」

黒田は2DKのアパートに住んでいた。
黒田「先生、ほんとに何しに来たの?」
天利「見舞いだよ。」
黒田「ウソっ、だって、授業は?」
天利「自習になった。校長も許してくれた。」
黒田「私なんかのために・・?」
天利「授業よりも黒田が心配だったんだ。迷惑だったか?」
黒田「そんな・・迷惑なんかじゃ・・ないよ。」
天利「そうか、じゃあ見舞いさせてくれ、な。」
黒田「うん。」
僕は黒田を布団に横にする。朝から何も食べてないようなので、おかゆを作ることにした。

・・
黒田「おいしい。」
天利「熱くないか?他にしてほしいことがあったら何でも言ってくれ。」
黒田「・・何でもいいの?」

kuroda

天利「ああ、先生の持ってきた果物でも食べるか?」
黒田「・・それも食べたいけど・・ね、先生、今二人っきりだね。」
天利「そ、そうだな。」
黒田「私のパジャマ姿、おかしくない?」
天利「おかしくないよ。」
黒田「かわいい?」
天利「うん、かわいいよ。」
黒田「ほんとに?」
天利「もちろん、本当にかわいいよ。」
うん、ウソは言ってない。黒田はかわいい。
弱々しくなっている所も新鮮な感じがしてとてもよい。
黒田「じゃあ、証拠見せて。」
天利「証拠?」

黒田「キスして。」
えっと・・それは、まずいかと。
校長が気にしていたことが的中か?
それに、今の僕には内田先生がいる。黒田の期待に応えることはできないな。

黒田「・・うっ、ぐすっ・・。」
天利「うわっ、突然泣きだすな。ど、どうした?」
黒田「やっぱり私じゃいやですよね。先生、知っているんでしょ?私のこと・・。」
う・・まあ、知っているが・・。
天利「な、何のことだ?」
知らないふりをすることにした。
黒田「・・ほんとに知らない?」
天利「あ、ああ・・。」
黒田「・・ウソっ。知らなかったらうちには来ないっ。先生は私のことなんかどうでもいいんだ。」
天利「あー、えっと、ウソついていたことは謝る。だけど、本当に僕は黒田が心配なんだ。」
黒田「なら、キスして。」
うーん、そこに戻るか。
黒田「やっぱりいやなんだ・・。そうだよね、私は他の先生達に汚されてたもんね・・。」
天利「そんなことないっ、黒田は何も悪くないっ。だから、だからそんなこと言うなっ。」
黒田「天利先生・・。」
黒田がゆっくり僕に抱きついてくる・・そして、唇を重ねた。
黒田「ん・・ちゅぱっ・・。」
舌を絡め、僕を求めてくる。
黒田「先生、好き・・。」
キスが終わると、黒田は僕を強く抱きしめた。
顔を僕の胸にうずめて話かけてくる。

黒田「・・校長先生は知ってるんだよね?」
天利「僕がここに来たことか?あ、ああ。知ってるよ。でないと僕はクビだよ。」
黒田「・・校長先生に言われた?私をなぐさめるようにって。」
天利「・・ああ、言われた。」
がばっと黒田が顔を上げる。

黒田「なら、私をなぐさめて。あのつらかった記憶を忘れさせて。先生に愛してもらえれば私、元気になれるよ・・。」
う、黒田はつらそうな顔をしている・・僕は・・僕は・・。

黒田「先生、助けて。」
天利「黒田っ。」
僕は強くぎゅっと黒田を抱きしめる。
こう抱いてみるとわかる・・黒田はこの細い身体でずっと苦しんでたんだな。
黒田「先生・・。」
天利「僕がそばにいるから、もう心配ないから。だからもう大丈夫だ。」
黒田「先生、エッチして・・。」
やっぱり来たか・・。正直したい。こんなに僕のことを想ってくれているんだ。
だけど、僕には内田先生が・・。
天利「えっと、熱があるからダメだよ。早く元気にならなきゃ。」
黒田「・・じゃあ、元気になったらエッチする。」
・・どうしようか・・まあ、後で考えるか。
天利「そうだな、なら早く元気にならないとな。」
黒田「うん。」
黒田は落ち着いたのか、布団に入り、眠った。

ふう、とりあえず僕が出来るのはここまでかな?
書き置きでもして学校に戻るか。

ピンポーン。
ん?
黒田の父「おーい、仮未、父さんが帰ったぞ。チェーン開けてくれ。」
父親が帰ってきたのか。良かった、もう安心だな。
僕は玄関に行き、チェーンを外した。
天利「お帰りなさい、お父さん。」
あれ?黒田の父親は少し様子がおかしい。
黒田の父「この犯罪者が―――。」
バキっ。思いっきり殴られた。
黒田の父「きさまっ、家に上がりこんで何していたっ。」
ぐはっ、お腹に強烈な一撃が入る。
痛い。それしかわからなかった。
黒田の父「娘に何をした?俺の大切な一人娘に何をしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
バキっ、ボキッ・・。
ドンっと大きな音がした。殴られた僕が壁にぶつかった音だ。
ダメだ・・意識が遠のく・・。

黒田「ん・・お父さん?」
黒田の父「ん・・け、仮未ぃ。大丈夫か?あの犯罪者はお父さんが退治したからな。」
黒田「え?あ、天利先生―――。」
黒田の声を最後に僕の意識は遠のいた。

・・
天利「ん・・。」
目を覚ますと、そこは・・黒田の家っぽいな。
黒田「あ、先生、大丈夫?」
黒田の父「申し訳ありません、わざわざお見舞いに来てくださっていたとは。」
天利「えっと、まあ、大丈夫ですよ。ですから顔を上げてください。」
本当は身体のあちこちが痛いのだけど・・。

それからすぐに黒田の家を出た。
何と言うか、黒田に告白された話が出たらまずいからなんだが・・。
さらに殴られたら本当にやばいからな。

・・
ようやく学校へ戻ってきた。
もう授業も終わった時間だろう。みんないい子にしていたかな?

とはいえ、今日は疲れた。学校に戻ったら校長に状況を報告してとっとと帰ろう。
あ、もちろん黒田に告白されたことは言わないどこう。キスしたこともね。
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