―――夏休み3―――

今日は濡髪がいない。
巫女さんとして仕事があるらしい。大変だなぁ。
さて、僕はどうしようか。
あ、墓参りでもしておくか。
うちの墓は実家の庭に建っている。
年を取った時にその方が楽だろうからそうしたらしい。
ものぐさというか、先を考えているというか、どっちだろう?それとも両方か?
ま、そういうわけで濡髪の家からもすぐ近くにある。
僕にとっても楽でいい。
・・
お参りに行く途中、非現実があった。
ノノ「くっ、今日のは手強い。」
怪人「ゲハハハ、一人だと思って油断したか。この星は我らのモノだっっっ。」
道路には十人くらい黒いスーツを着込んだ人が倒れている。
立っているのはノノちゃんと・・良く作られた怪人?スーツを着こんだ人だった。
この間の続きかな?田舎で車があんまり来ないからって道路でするのはあぶないと思う。
ノノ「そうはさせないっ。レインボーアローっっ。」
怪人「効かぬわっっ。くらえ、ダークボムっっっ。」
ドォォォン。すごい爆発がした。
ず、ずいぶんとリアルな遊びだな。ノノちゃんが虹色に光る何かを出したり、怪人が出したのが爆発したり。
ノノ「あ、、身体が、動かない。」
怪人「グフフフ、中々かわいいじゃないか。」
怪人が倒れたノノちゃんのお尻を触る・・遊びとはいえ、それはやっちゃダメだろう?

nono

怪人「よし決めたっ、お前にオレ様の子を産む権利を与えよう。幸せだろう?一日十回は精を放ってやろう。」
ノノ「だ、だれが敵の子なんか・・。」
怪人「人間などオレ様の精を受ければすぐに快楽の奴隷となる。離れられなくなるぞ。」
ノノ「じょ、冗談じゃないわ・・私は負けない・・。」
怪人「既に動けないじゃないか。さて、連れて帰るか。」
怪人はノノちゃんを担いで連れて行こうとする。ノノちゃんは気を失ったように見える。
・・マジ?設定にしては本当そうなんだけど。
これは設定これは設定これは設定これは設定これは設定。
・・やっぱり設定には見えないっ。助けないと。
僕は手のひら大の石を思いっきり怪人役?の人の頭にぶつけた。

ゴンッ。

クリーンヒットッ、すごい音がした。訴えられてもおかしくないくらいだ。
怪人「ぐ、、な、なんだ?」
今のうちにノンちゃんを抱き上げ、この場から離れた。
走って逃げる。後ろを振り返ると怪人役?の人が追いかけてきた。
怒っているようだ。ごめんなさーい。でも、誤解されそうな遊びでしたよ?
ノノ「ん・・あれ・・?糸利様?」
天利「ノノちゃん、目を覚ました。あの、後ろの怪人役の人に石ぶつけちゃったんだけど、謝って許してもらえそう?」
ノノ「・・絶対殺されるわ。」
天利「あはははは、警察まで逃げ切れるだろうか?」
ノノ「あれは警察じゃあどうにもできないわ。特殊な力が必要なの。」
こんなときでも設定を守ろうとするなんて・・みんなすごいなりきりだ。
僕も一応関わった以上は最後まで付き合うか。
天利「ならどうすればいい?」
ノノ「悔しいけど、濡髪の御両親なら何とか出来るわ。すぐ近くでしょ?」
天利「旅行中です。濡髪も仕事があるからって出かけてる。」
ノノ「うそっ、他の所まで逃げ切れないわっ。」
天利「どうすればいい?」
ノノ「・・これ、使って。」
天利「・・銃刀法違反です。」
拳銃を渡された。おいおい、ここをどこだと思っているんだ?
ノノ「ただの拳銃じゃないわ。力のあるものが使えばやつらを倒す必殺の武器になるの。」
天利「僕が使っても効き目ある?」
ノノ「あまりないでしょうね。だけど、多少の足どめになるかも。その間に・・そうね、この先に教会があるはずよ。そこへ協力を要請しましょう。」
天利「あ、ああ。」
拳銃なんて撃ったことない。BB弾なら撃ったことあるけどそんなに上手じゃなかったな。
天利「どうにでもなれっ。」
怪人に拳銃を向け、ぶっぱなした。
怪人「うわぁぁぁぁぁぁぁっっっ。」
え?
弾は命中したらしい。だけど、怪人が溶けだした。
ノノ「うそ・・。」
そりゃそうだろう。人が目の前で溶けたらウソだと思いたくなる。
・・殺人?
クビとかそんなレベルを超えた気がした。
膝を折り、僕は愕然とする。
刑務所暮らしか・・情状酌量は・・あるよね?この場合は仕方ないよね?
ノノ「う、うそでしょ?こんな・・。」
天利「ぼ、僕は死刑になるの?」
ノノ「なんで?」
天利「だって、殺人・・。」
ノノ「これ、人じゃないから大丈夫よ。」
天利「え?だってしゃべるし、どう考えても人以外であんなこと出来る生き物はいないよ。」
まあ、人は溶けたりしないが。
ノノ「何言ってるの?これは化け物。罪になんかならないわよ。」
・・うん、この怪人は化け物。よって罪じゃない罪じゃない。
認めたくない。これが現実なんて・・。
ノノ「それにしても糸利様はすごいんですね。普通の人よりもずっと強い力をお持ちだとは。」
天利「そう?」
確かに一発で命中したしね。
あ、屋台でコルクを撃ったこともあったな・・ってその程度の練習で拳銃が命中するようにはならないか。
ノノ「あの・・その銃は糸利様に差し上げます。また私を助けてください。」
天利「でも来週には仕事先に戻らないといけないよ。」
ノノ「え?ずっとこちらにおられないのですか?」
天利「ああ、夏休みだから来ただけ。」
ノノ「残念です・・でもいいです。それは糸利様がお持ちください。気にいらない相手は撃っちゃってください。」
天利「ははは・・。」
撃ちたいやつがいますよ。でも撃っちゃだめ撃っちゃダメだ。
・・
一旦濡髪の家へ行き、ノノちゃんの怪我を治療した。
ノノ「今日はほんとにありがとうございました。必ずこのご恩はお返しします。」
天利「銃をもらっちゃったし、あんまり気にしなくていいから。」
ノノ「いえ、必ずお返ししに行きます。待っててください。」
うん、真面目ないい子なんだなぁ。
ノノちゃんはそう言い、帰って行った。
ゆっくりしていけばいいのに、ライバルの神社にはそう長くいたくないらしい。

・・それにしても・・。
本当に魔法少女や地球侵略の怪人がいるのか?
でも、あの怪人、本当に溶けてしまったし・・。

この世界はどうなっているんだ?

・・
夜になると濡髪が帰ってきた。
魔法少女が本当となると、濡髪も本物の巫女さんなのか。
怪人と戦い地球の平和を守る―――
ってそれは巫女さんの仕事じゃねぇ。
一瞬気付かなかったのはアニメやゲームのしすぎか?
一般的な巫女さんの仕事は神社のお手伝いだよな。
あ、そう言えば処女じゃなくてもいいのかな?初めてを奪った自分が言うのもなんだが。
天利「なあ濡髪、巫女さんって処女じゃなくていいのか?」
濡髪「・・糸利ちゃんセクハラ・・。」
天利「え?あ、別にそういうつもりじゃ・・。」
濡髪「・・もしそれを雇用条件にすると訴えられるよ。」
ん、まあそうだろう。ってそうじゃなくて。
天利「怪人と戦う力にさ。処女を失うと戦う力を失う漫画とかゲームとかあるだろ?」
濡髪「えっと、それは力にもよりますね。普通、処女でなくなると力が無くなるって非科学的でしょう?」
ああ、怪人や戦う巫女や魔法少女も非科学的ですよね。
濡髪「どちらかというと、身体が処女であるより心が重要なんです。」
天利「心?」
濡髪「はい、例え純潔を失っても力は無くなりません。しかし、それを扱うには己の全てを、全神経を集中させる必要があります。」
濡髪「純潔を失うのは母親になるための流れの一つです。その流れにのったら力を扱うために己の全てを集中することができなくなります。」
天利「なるほど、一部を母親になるための準備で取られちゃうのか。それで処女を失う=力が使えなくなるという結果になるのか。」
濡髪「はい、そういうことです。ですが、そこまでしないといけない力はかなり大掛かりなものになります。」
天利「大掛かり?」
濡髪「例えば―――神降ろし。」
天利「出来るの?そんなこと?」
濡髪「糸利ちゃんが思っているような神様はいません。しかし、我々と交信できる別次元の存在がいます。」
濡髪「はあ、別次元ですか。」
ついていけない話ばかりだ。
濡髪「私達とは全く違う存在です。普通は交わることはありません。」
濡髪「ですが、それを可能にしたのが神降ろしです。神とは未知の力を持った存在という意味になります。」
天利「さっき言ってた別次元の存在があたるのか。」
濡髪「はい、科学的な証明がされていないので信じにくい話だと思いますが、そういうものがあると認識してください。」
天利「今なら何でも信じられるよ。」
魔法少女が本物だったんだからなぁ。既に僕の常識は壊れたよ。
濡髪「それは・・私が話しているからですか・・?」
そうきたかっ・・んーと。
天利「もちろんだよ。濡髪がウソをつくはずないからな。」
濡髪「てれてれ。」
期待に応えるためとはいえ、うそは心が痛む。
濡髪「あ、えっと、話を戻しますが、神降ろしのような大掛かりなものでなければ処女である必要はありません。」
天利「戦うのには処女でなくてもいいと。」
濡髪「はい。一応、処女専用の戦う力もありますが、そういう力を会得するよう修行するかは神社の方針次第ですね。」
天利「なるほど。よくわかったよ。」
処女じゃなくても濡髪は戦えるんだな。にしても・・。
天利「ここは異常なことばかり起きるなぁ。」
濡髪「そうですか?異常なことってありましたか?」
天利「いいよ、もう。」
僕にとっての異常はここの人にとって普通なんだろうな。
濡髪「あ、異常、ありました。」
天利「え・・。」
ここの人が考える異常って・・どれだけ恐ろしいんだ?
幽霊か?悪魔か?隕石が降ってくるのか?
濡髪「糸利ちゃん。」
天利「何?」
濡髪「ううん、糸利ちゃんが異常だよ。」
天利「何で?」
濡髪「だって、私をこんなにおかしくするんだもん・・。糸利ちゃんのことを想うだけでおかしくなりそうだよ・・。」
意外と僕の常識内の回答だった。
濡髪「それに、若いのに大金持ちだしね。」
天利「え?僕そんなに貯金ないよ?」
金持ちと言えるほどお金は持ってないし、高価な物も持っていない。
濡髪「糸利ちゃんの御両親の会社、糸利ちゃんが出資者なんだよ。」
え?
天利「そうなの?僕知らないよ。」
濡髪「小さい頃だからね。あれ?二十歳になったら話すって言ってたけど?」
天利「本当に初耳だ。小さい頃?」
濡髪「そっか、二十歳の頃からこっち帰ってなかったもんね。だれも言ってくれなかったよね。」
とはいえ、親が子供のお金を管理するとか言って取ってくあれが出来るくらいの年だよなぁ。
小学生くらいだろう。とすると・・。
天利「出資金は五万円くらいか?会社が大きくなったから価値も上がったのか?」
濡髪「ううん、三億円。」
・・リカイフノウ、リカイフノウ。
天利「僕はどんな悪いことをしてそんな金を受け取ったんだ?」
濡髪「宝くじで当たったんだよ。」
宝くじ・・まあ確かに一等+前後賞でその額になるけど。
濡髪「おじさんが買うのについて行って一緒に買ったんだよ。」
天利「はあ。」
濡髪「ちょうど町内会の集まりの時に結果を確認しちゃって、正式に糸利ちゃんのお金になったんだよ。」
天利「それで、その金がうちの両親の会社の出資金になっていると。」
濡髪「一応糸利ちゃんが小さい頃だったからね。大金だから御両親が一時預かりしてたんだよ。その間に運用しようってことになって・・。」
天利「二十歳になったら僕に返却されると。」
濡髪「あ、でも今返却されたら会社困るかも。」
天利「まあそれはうちの親がどうにかするだろ?楽しみだ。」
濡髪「・・どうしても三億円必要?」
濡髪は僕の袖を掴んで上目づかいで僕を見る。
天利「別に必要じゃないけど、なんで濡髪がそんなこと言うんだ?」
濡髪「・・糸利ちゃんの会社から資金提供を受けてるの。うちの神社。」
天利「そうなの?」
初耳だ。
濡髪「うん、怪人との戦いのために高い道具が必要だったり修行に行ったりしたし、それに魔法少女が参拝客を取ってるの。」
ああ、それでノノちゃんと仲が悪かったんだな。
濡髪「糸利ちゃんの御両親はね、他の神社や寺院、教会も支援しててね、町議会にも支援してるから無くなると困るの。」
天利「うちの親、色々してんだな。」
濡髪「それに地元の人を雇ってるからその人達も困るよ。ね、糸利ちゃん、すぐに三億円必要じゃなければ・・ね・・」
天利「ああ、わかったよ。うちの親がいいことしているなら僕も協力するさ。」
濡髪「糸利ちゃん・・ありがとう。」
天利「あれ?すると、うちって魔法少女と敵対してるんじゃないか?何でノノちゃんは僕に好意的なんだ?天利家って言ってたしわかってたんだろう?」
濡髪「多分切り崩し。うちとかへの支援をやめさせて自分達にそのお金を回してもらいたいんだよ。魔法少女するのもお金かかるんだよ。」
天利「そ、そうなんだ。」
一気に現実的な話になったな。うーん、魔法少女は夢のような話だと思ってたんだが・・。
天利「そういえばうちって何の仕事してるの?」
濡髪「山を買って水と農林、虫、山菜などのビジネスをしてるよ。後、二酸化炭素の排出権の取引とかも。」
濡髪「環境に優しい仕事だし、管理の大変な山を引き受けたりして受けはいいよ。」
天利「い、意外と普通の仕事だ。儲かってんの?」
濡髪「うーんと、成金って言っていいくらいは儲かってるよ。」
天利「はは、そうなんだ。」
濡髪「町の行政にも協力的だし、お金も借りずに経営してるし安定してるよ。」
とても子供が帰省することを知っておきながら旅行に出かける親がやっている仕事とは思えない・・。
すげえな。うちの親。
濡髪「糸利ちゃんも教職やめて実家に帰ってもお仕事はあるからね。」
天利「親の会社にコネで入ると。」
濡髪「・・それともうちに婿に来る?」
天利「・・叔父さんが許してくれるかな?」
濡髪「難しいかも・・。だけど、障害があった方が絆は強くなるよ。」
・・障害か・・。
仕事先のも障害と考えれば少し気が楽になるかな?
障害を乗り越えた時、愛する人と結ばれる。そうであってほしい。
濡髪「私は、いつでもいいからね。」
天利「あ、ああ。」
いかんな。目の前に好意を寄せてくれる人がいるのに別の人を考えてしまった。

仕事先はつらかったけど、もう少しがんばろう。
必ず、みんな救おう。
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