―――その昔、学生時代

手紙をもらった。
ピンク色の封筒、中を開けると手紙が入っていた。
ラブレターみたいなんだけど・・・なにこれ?

どう見ても女の子が使うような便箋。
右下にはファンシーなクマさんが描かれていた。

・・おかしいわね。中を見るとラブレターなんだけど、使ってるのは女の子用。
あたし女なんだけど。
女の子からの手紙・・そういうのはお断りなんだけどなぁ。

差出人の名前は無し。
指定の日時に校舎裏に来てくれって内容だけど、待ってるのが女の子だったらどうしよう?
女の子からの告白・・考えるだけで頭が痛いわ。

あたしにそういう趣味はない。
ごくごくノーマルよ。
付き合ってる人はいないけど、だからって”女の子でいい”という発想にはならない。

・・にしても古風ね。
最近ならメールや電話を使うと思うんだけど。
呼び出し場所が大学の校舎裏だから、相手の年は最低でも大学生くらいよね。
携帯持ってない人なんて知り合いにいないし。

知らない人・・んー、まったく知らない人と付き合うのもねぇ。
彼氏は、その、欲しいとは思うけど、、、女の子が相手なのは嫌だし、知らない人もちょっと・・。

・・でも、どんな人なのかな・・。

・・
・・・・

溜木「あの、あの、あの、あの、あの、あの、あの・・」
当日、ラブレターに書いてあった呼び出し先に行ってみたんだけど・・。

溜木「あの、あの、あの、あの、あの、あの、あの、あの、あの・・」
ええと、確か同じサークルの村崎 溜木くんだったっけ。
真面目で女の子が苦手って感じだったっけ。
あたしよりひと月くらい遅れてサークル入ったから、ちょっと先輩気分でサークルのこと色々教えたっけ。

時々ぼーっとすること以外は、まあ普通ね。
うーん、村崎くんかぁ。
特に付き合えないって理由はないし、別にいいかな。

溜木「あの、あの、あの、あの、あの、あの、あの、あの、あの、あの、あの・・」
智紀「とにかく落ち着きなさい。」
溜木「あ、ごめん。」
智紀「なに?こんなところ呼び出して。用があるなら携帯使えばいいのに。」

溜木「あ、その、携帯だと軽い感じがしたから、えっと・・突然悪いな。えっと、今日はちょっと伝えたいことがあってだな、その、えっと・・。」
大体の用件は手紙を見ればわかるから、もう少し簡略化して。
智紀「要点は絞りなさい。言いたいことはいくつあるの?」
溜木「ええと、1つです。」
智紀「言ってみなさい、聞いてあげるから。それと、”ええと”はいらないわよ。」

溜木「ち、智紀さんが好きです、付き合って下さい。」
・・・・い、言われるのわかってても、面と向かって告白されるのはちょっと照れちゃうわね・・。
落ち着いて、落ち着いて冷静に対応するのよ。

智紀「いいわよ。用件はそれだけ?」
溜木「あ、うん。そうだけど・・。」
智紀「あたし先生に呼ばれてるから行くわね。」
溜木「う、うん。」

あーん、別に呼ばれてなんかないんだけど。なんだかこの場所にいるのは・・恥ずかしい気がした。
村崎くんが彼氏・・そういえば、同じ会社に就職したんだっけ。
社内恋愛かぁ。ドラマで何度か見たことあるけど、やっぱり山あり谷ありなのかな?

・・
・・・・

―――取引先にて

取引先の男「あーどうしよっかな〜。んー、もうちょっとどうにかならない?」

智紀「わかりました。では部長に許可をとります。」
取引先の男「ああ、社に戻って検討してくれ。」

智紀「いえ、すぐ終わりますから。」
取引先の男「ん?」
あたしは携帯をとりだし、部長の番号に連絡を入れた。

・・・・

取引先の男「いやぁ仕事が早いねぇ。そんなすぐOKもらえるもんなんだ。」
智紀「権限持った人に連絡とればすぐですよ。早い方がいいでしょう?」
取引先の男「でも、決断を急いで失敗とかしないの?」
智紀「決断を遅らせる方が失敗だと思ってます。早く今の仕事が終われば、次の仕事にも早くとりかかれますから。」
多くの仕事をこなせば、成功も多くなります。
最近は、失敗しないよう一つのことに時間を多く使う人が増えてるように思えますが、短い時間で多くの仕事をこなし、成功も増やす方がいいに決まってます。

取引先の男「ははは、こりゃ敵わないなぁ。次も機会があったら頼むよ。」
智紀「では、来週この時間にきます。いい新製品が出来ましたから、資料を持ってきます。」
取引先の男「はぁ・・こりゃ敵わん。じゃあ旧製品と比較できる表も頼むよ。」
にこ。
智紀「わかりました。」

・・・・

課長「うーん、仕事を早く終えてくれるのはいいんだけど、できればオレを通してくれないかなぁ。」
智紀「部長からは、いつでも連絡していいと許可をいただいてます。」
会社に戻った後、さっきの取引先との件について、課長から苦情をもらった。

取引価格をいきなり部長に相談しないで、一度課長に連絡してほしいとのことだった。
でも、課長に連絡したらいつ決まるかわかりません。
その点、即断即決してくれる部長なら話は早くまとまります。
その方が会社のためになるのですから、いいじゃないですか。
部長もそれでいいって言ってくれるのに。

課長「オレの立場も考えてくれよ。オレを介さずにいたらオレ不要じゃんか。」
”オレ”が多すぎます。考えるのは課長のことではなく、会社でしょう?

智紀「課長に相談できることは課長に相談してます。ですが取引先との交渉毎については部長に判断を仰ぐようにしています。」
課長「それが困るって言ってんだよ。わかんないかなぁ。」
智紀「部長には許可をいただいてますし、結果も出ています。これ以上は部長に言ってください。」
課長「そうじゃないんだよ。そうじゃ・・。」
部長に言ったけど断られたってことですね。
ふぅ、本当にこれ以上課長と話しても無駄ですね。

智紀「とにかく、この件に問題はありませんから。あたしは仕事に戻ります。」
課長の愚痴を聞くのは仕事ではありません。
はっきり言って、無駄です。
課長「待てよおいっ、、、くそっ。」

ガンっと後ろから机が蹴られる音がしました。
課長、その机は会社の備品なんですから大切に扱って下さい。
せめて、”課長らしく”部下に手本くらい見せてください、このままじゃあ反面教師にしかなりません。
はぁ、まともな上司が欲しいです。

・・・・

さて、就業時間ですし帰りましょう。
智紀「お先に失礼します。」
課長「なんだ?上司が残ってるのに先帰るのか?」
智紀「課長は昼休みが終わった後、もう少し早く仕事にとりかかればいいと思います。それに、会社から残業は控えるよう通達が来ていますので。」
それと、コアタイムぎりぎりの時間に出社するのもよくないですよ。

帰れる人から早く帰る方がいいです。
もし手が足りないなら事前に伝えておくべきです。
声をかけてくるまで待つなって新人教育の時、習いませんでしたか?
今日残した仕事はありませんし、帰りましょう。

課長「くそっ、自分の仕事だけすりゃいいと思うなよ。」
自分の仕事すらできていない人に言われる筋合いはありません。
帰って夕ご飯作らないといけないんです。

・・
・・・・

智紀「ただいま。」
・・と言っても返事はない。
まだ溜木は会社かな?経理なのにいつもちょっと遅く帰ってくる。
以前聞いたら、”なんかみんな帰らないから帰りづらくて・・”と言っていた。

気にしてたら残業代ばかりかさみます。
というか、経理は特に残業控えるよう通達来てると思うけど。

まあいいか。とりあえず夕ご飯作り始めましょう。

・・・・

がちゃ。
溜木「ただいま〜。」
あ、溜木が帰ってきた。

智紀「お帰り。ご飯もうすぐ出来るからね。」
・・あれ?
なんだかうわの空な感じ。
隠しごとかな?

智紀「どうしたの?お弁当おいしくなかった?」
溜木「い、いや、おいしかったよ。」
はぁ、どうやら隠しごとみたいですね。
エッチな本でも買って来たのでしょうか?

溜木「じゃあ、着替えてこようかな。」
智紀「うん。着替えてゆっくりしてて。」
溜木が帰ってくると、上着(ジャケット)とカバンはあたしがしまうことになっている。
なので、玄関で渡してもらうのだけど・・。

智紀「・・どうしたの?上着とカバンしまうわよ。」
なんか渡したくないって感じ。ふふん、隠しごとは上着のポケットか、カバンに入ってるわけね。

溜木「ハ、ハイジョウゾ。」
ふぅ、あなたは隠しごとできない人ね。
わかりやすすぎ。

智紀「・・・・なにか隠しごとでもあるの?」
溜木「いえいえいえ、なんでもないです。はい、カバンと上着。」
中は見ないから安心しなさい。
でもまあ、もう少しわからないようがんばることはできなかったのかしら?

智紀「隠しごとしちゃダメとまでは言わないけど、わからないようにしてね。傷つくから。」
溜木「ははは、なんのことだろうか。ぼくにはわからないです。」
いつから一人称を”ぼく”に変えたの?

智紀「はいはい、とにかくとっとと着替えてきてください。」
溜木「了解であります。」
・・さて、料理作りに戻りましょう。

・・・・

溜木「いただきまーす。」
智紀「いただきます。まずかったらちゃんと言ってね。でないと直せないから。」
溜木「OK。だけど、もう俺が指摘することって無いような・・。」
智紀「ちゃんとあるわよ。時々新しいことするからうまくいかないこともあるわ。」
昔はきちんと指摘できてたから、今でも大丈夫よ。
もっと、おいしい料理を作ってあげたいのに。

溜木「えっと、そういや残業はしてないんだな。」
智紀「最近はね、あんまり残業するなって言われてるから。」
溜木「あれ?こっちもそうだけど、営業も言われてるのか。」
今はどこも経費削減が叫ばれてるからね。
”仕事内容に見合った経費の使い方”じゃなく、ただひたすら経費削減って言うからちょっと問題だと思うけど。

智紀「営業先も残業しないようにしてるからね。お客の都合じゃない限り、残業しても意味ないの。」
溜木「そうなのか。そっちも大変なんだな。」
智紀「ええ。決められた中で結果を出さないと行けないから。」

溜木「でもまあ、智紀なら大丈夫だろ。」
智紀「あたしの営業成績は3番目くらいね。クビにはならないけど1番を狙えとは言われるわ。」
溜木「・・すごいな。がんばってんだな。」
智紀「一応手を抜いているつもりよ。1番になったらやっかみがすごいもん。」
女性が出しゃばるなって言う人もまだいるのよね。
さすがにお茶くみしろって人はいないけど、女なのに営業できるのか?って言う人はいる。
身体で契約とってるんじゃないかって言う人も。
まあ、それなりに結果さえ出してれば、全部やっかみでしかないのよね。

智紀「そっちはどうなの?大変じゃない?」
溜木「平和なもんだよ。給料日前とかは忙しくなるけど、残業するほどじゃないし。」
智紀「いいわね〜〜。」
溜木「と言っても、デスクワークはしたくないんだろ。」
智紀「うんっ。やっぱ外回り最高っ。」
じっとしてるくらいなら、飛び込み営業してる方が気が楽。
色んな人に出会えて、うまくいけば契約もとれるし。

溜木「夏は暑いし、冬は寒いし、きつそうなんだけど。」
智紀「慣れればまったくそんなことないわ。対策製品もたくさん販売されてるし。」
溜木「つーと、その電池で動く扇風機もその一つか。」
溜木が指差したのは、テーブルの上に乗ってる扇風機。
単3電池2つで動く、手のひら大の携帯用扇風機。

智紀「これ?これは屋内用。コンセントタイプの使うとうっさいのがガミガミ言うんだもん。」
溜木「少しくらい構わないのにな。それで効率が上がるならやった方がいいのに。」
智紀「そうそう。人にはやり方があるのよ。それを認めないで横一列のやり方を押しつけて、でも結果はだれよりも良いものにしろって言うし。自分はデスクに座って社内発表会の資料作りしてるのよ。あいつはもっと部下のことを考えてもいいと思うのに。言ってもまったく聞かないで、自分の言いたいことをただひたすら押しつけるだけ。課の全員が嫌ってるわ。ノルマを押し付けるし、意味ない説教繰り返すし、女の子にはセクハラするし、男にはねちねちと嫌がらせするし。」
課長はもう少し部下の教育計画を考えるとか、取引先との対応マニュアルを作るとかしてくれればいいのに。

・・・・あ、ちょっと熱くなっちゃった。
溜木はこういう愚痴を聞いてくれるから、つい色々言っちゃう。
ごめんね、いけないとはわかってるんだけどね。

・・
・・・・

溜木「ふわわわわわわわーーーー。」
溜木があくびをしたということは・・・うん、眠る時間ね。

智紀「じゃあ寝るから。おやすみなさい。」
溜木「ああ、おやすみーーー。」
ちゅっ。

えへへ、ちょっと照れちゃいます。
眠る前にキスをするのが日課。
最初なんとなくしてから、ずっと続いてます。

智紀「それじゃあまた明日。あまり夜更かしはしないようにね。」
あたしは隣の部屋に行き、布団を敷いて横になる。
おやすみなさい。

多分これから溜木は隠し持ってきたエッチな本でも見るんだと思う。
まあそれくらい許そう。
本当は、あたしが認めたもの以外は見て欲しくない。
でもなんでも制限したら反発するのは人間の性。

多少は目をつむりながら、放置しすぎないようにする。
週末は家探ししよう。それまでに処分してれば不問に。
処分してなければ目の前で焼きつくそう。
それで終了。後は・・いつも通り・・・・うとうと。

・・
・・・・

―――会社、お昼休み

飲み物買ってこよう。
お弁当は持ってきてるけど、飲み物は会社で買っている。

経済的には麦茶を水筒に入れてくればいいけど、会社の自販機は結構充実してる。
開発部門が作る未発表の飲み物が、自販機に置かれるからだ。
しょっちゅう種類が変わり、色んな味が楽しめる。
値段も安くしてあるし、それなりのおいしさのものが置いてある。

現状のをマイナーチェンジしたものが多いけど、それでも楽しい。
昔は社員に配って試飲してもらっていたみたいだけど、販売するようになったのは経費を考えてのことかな?

今日は新しいの出てるかなぁ・・あ、溜木だ。

ビルの窓から溜木が見えた。
今日は外でお昼食べるのかな?

社内では付き合ってることを公言していない。
別に恋愛禁止とかはないけど、言ったところで利点はないと判断したまで。
からかわれたり、溜木に迷惑かけちゃう不利点もあるし。

溜木は近くの公園に入っていった。
公園でお昼かぁ。
風が強くない日ならそれもいいかもね。
あたしも外で食べようかなぁ・・あれ?

公園に入っていった溜木が女の人に会ってる。
うちの制服・・だれ?
遠くからだからはっきり見えないけど、若い女の子みたい。

・・・・べ、別にだれとお昼ご飯食べても構わないわよね。
そんなの溜木の勝手よ。
勝手・・勝手・・・・。
だれだろう、あの子・・?

・・
・・・・

あう、今日の午後は殆ど仕事にならなかった・・。

誰だったんだろう?
浮気?
ううん、偶然一緒に食べることになっただけよ、きっと。

よしっ、夕ご飯を作ろう。
おいしいご飯を作ればちゃんと帰ってきてくれるわ。

今日は溜木の好きなものを作ってあげよう。

・・・・

溜木「いただきまーす。」
智紀「いただきます。」
溜木が帰ってきて、夕ご飯が出来たので夕食開始。

・・・むー、せっかく溜木の好きなもの作ってあげたのに、うわの空じゃない。
まさか、本当に浮気してて、別れ話を切り出したいのかな・・?
やだよ、そんなの。
もっと一緒にいようよ。

いつまでも無言で食べ続けるのでこちらから切りだすことにした。
智紀「・・どうしたの?おいしくない?」
溜木「あ、いや、お、おおおおおおおおいしいよ。」
うそが下手なのは別にいいんだけど、もう少し努力したらどうだろうか?

ふぅ。
智紀「・・・・言わなきゃいけないことはさっさと言うように。」
溜木「はい・・。」

溜木「えっとだな、今日な、その、なんだ。んーとだな。」
智紀「用件はいくつあるの?」
溜木「1つです。」
智紀「まずは結論を言うように。」

溜木「はい。ええと、友達が出来ました。」
友達?
智紀「それはよかったじゃない。言いづらいことなの?」
多分、お昼一緒に食べてた女の子のことだろう。じゃなければ、言う必要すらない。

溜木「お、女の子なんだ。違う部署の人で、ちょっとな。」
智紀「その”ちょっと”について話しなさい。」
溜木「あー俺が失礼なことしちゃってな。後で一部誤解だってわかってもらって、じゃあついでにと、お昼一緒に食べたんだ。」
・・・・話が見えない。
”失礼なことをした”のなら”誤解”じゃないでしょう?
まぁいいわ。浮気じゃないみたいだし。

智紀「友達が出来たのならよかったじゃない。普通に言えばいいのに。」
溜木「ええと、世の中その普通が難しいんだよ。」
智紀「浮気じゃないなら気にしないわよ。女友達の一人や二人。」
やましい気持ちはあるみたいだけどね。
”女性”として見てるから言いづらいのよ。
綺麗な人なのかな・・。

溜木に浮気するつもりが無くても、相手にその機があれば”もしかしたら”があるかも・・。
・・大丈夫だよね、どこにも行かないよね・・。

・・
・・・・

夕ご飯が終わり、いつの間にか眠る時間に。

・・・一緒に暮らしてる恋人同士なら、え、エッチなこともするとは思う。
だけど、あたしはそういうのがだめなの。
まだしたことないけど、いずれしなきゃいけない、でもまだいいかな、と思ってる。
だけど、恋人を・・好きな人を他の女にとられるくらいなら、す、少しくらい・・した方がいいかな・・。

・・・・・・・・・・どうすればいいかわからない・・・・・・・・・・。

ええい、とにかく行動あるのみっ。
あたしは溜木に抱きつき、強く唇を重ねた。

・・・・・・・・・・ここからどうすればいいの?・・・・・・・・・・

・・
・・・・

智紀「おやすみなさい。」
仕方ないので、極力平静を保ったふりをしながら自分の部屋に戻った。

なにか誤解とかされてないかな・・。
あーもう、あたしなにしてるんだろう。

・・・・

それから会社ではお昼休みに窓を見ることが多くなった。
毎日溜木が女の子とお昼ご飯を公園で食べるからだ。

仲良さそうに話して、一緒に会社に戻る姿はまるで・・恋人のよう・・。
うらやましいな・・あたしも溜木とあんな風に・・。

・・
・・・・

ドンッ!!!
課長「まったくお前はなんてことしてくれたんだ!!!!」
智紀「ごめんなさい・・。」
課長「ったく、ごめんで済めば警察はいらないんだよっ。3億だぞ3億。取引先怒らせて・・せっかくの大口だったのに。」
智紀「本当に、すみませんでしたっ。」
あたし、なにしてるんだろう。
溜木が女の子と毎日仲良くしてるのが気になって、取引先でぼーっとしちゃったり、コーヒーこぼしたり、製品情報間違えたり・・。

ぷるるるる、ぷるるるる・・。
課長「ほんとお前はっと、電話か。ちょっと待ってろ。」
課長が電話ではいはい言ってる。
今日はずっとぐちぐち言われるんだろうなぁ。
はぁ、クビはないとは思うけど、減俸にはなっちゃうかなぁ。

課長「はい、こちらこそお願いします・・。」
がちゃ。
課長「おい、今すぐ取引先へ行ってこい。」
智紀「え?」
課長「お前が怒らせた取引先だよ。今行けば考え直してくれるってさ。」
智紀「本当ですか?」
課長「うそ言ってどうなる。ほら、とっとと行ってこい。」
智紀「はいっ。」
よかった。まだここから挽回できる。

課長「あーちょっと待て、行き先は会社じゃない。」
智紀「どこですか?」
課長「ちょっと待ってろ、確かネットで地図が出るから。印刷してやる。」
智紀「ありがとうございます。」
あたしは課長から地図を受け取り・・えっと。

智紀「ここ、飲み屋・・ですよね?」
課長「ああ、ここに来てくれってさ。」
智紀「はぁ。」
飲み屋かぁ。お酒苦手だからあまり好きじゃないんだけど・・。
でも失敗を取り戻すため、行こう。
お酒ついで料理みんなの小皿にとって、話を聞いていればいいよね。

・・・・

ここかな?
会社で行う飲み会よりはいい店っぽい。
お座敷で、旅行の時に食事をとる場所みたい。

取引先の男「おー智紀ちゃんこっちこっち。もう始まってるよーーー。」
・・・お座敷の高級さも、お客の品位が低くては無意味ですね。
とは言わない。ここは下手にでないといけないよね。

智紀「今日は失礼しました。またこうして機会をいただけてありがとうございます。」
取引先の男「はははは、それはもういいから。ほら、座って座って。」
智紀「はい、失礼します。」
あたしは取引先の男の横に座る。

智紀「お注ぎしますね。」
取引先の男「おーすまんな。」
智紀「いえ、あたしお酒は苦手なので、こういう方が楽です。あ、なべいい感じですから盛りますね。」
取引先の男「どもども。智紀ちゃんはお酒苦手なのかー。よし、おじさんがお酒の美味しい飲み方を教えてやろう。」
智紀「と言うより、酔いやすいんです。おいしくないってわけじゃないんですよ。」
ビールの一杯くらいなら飲めるけど、二杯飲むとまっすぐ歩けなくなる。

取引先の男「そうかそうか。おーい店員さん、ソフトなドリンクを持ってきてくれ。」
ソフトドリンクですか。それなら助かります。
もしかして、お酒を飲まされるのかと思いましたが、杞憂でした。

取引先の男「グレープだけど構わんよな?」
智紀「はい。お心遣いありがとうございます。」
取引先の男「ははは、まあな。」
・・あれ?周りの人たちがにやにやしながらこっちをちらちら見てます・・なんか気味が悪いです。

取引先の男「そういや智紀ちゃんは彼氏とかいるの?結婚はしてないんだよね。」
智紀「はい、お付き合いしてる人がいます。」
取引先の男「そうかそうか。結婚は間近かな?」
智紀「結婚は・・まだですが、そのうち考えないといけないとは思ってます。」

男「マネージャー、これは楽しみでしょう?にやにや。」
取引先の男「こら、お前らはお前らで楽しんでろ。オレたちの世界に入ってくるな。」
男「はーい。今度おこぼれお願いしますね。」
取引先の男「お前は黙ってろ。」

智紀「? 何の話ですか?」
取引先の男「いやいや、なんでもないよ。」
店員「御注文のドリンク、お持ちしました。」
取引先の男「おー待ってたよ。はい、智紀ちゃん。」
智紀「ありがとうございます・・ですが、どうして三杯もあるんですか?」
他の人も頼んだのかと思いましたが、全部あたしの目の前に置かれてます。

取引先の男「ほらほら、オレの前にも三杯〜〜。」
そうですね、でも、あたしの前にドリンクが三杯も置いてある理由にはならないんですが。

取引先の男「智紀ちゃんと一気飲み大会〜〜〜いえーーーーーーーい。」
ぽかーん。

取引先の男「どうした、ノリ悪いぞ。」
智紀「あの、一気飲みって・・。」
取引先の男「智紀ちゃんがジュース三杯飲むのと、オレがビール三杯飲むのと競争ね。」
智紀「お酒の一気飲みは身体に悪いですよ。それも三杯なんて。」
取引先の男「ふふふ、オレは樽を一気に飲むこともできるんだ。なんも問題ない。」
いえ、それでなにかあったら大変です。

取引先の男「智紀ちゃんが勝ったら契約は智紀ちゃんとこに決めちゃうぞ。」
智紀「え・・本当ですか?」
今日失礼なことをして、候補から外れたのを元に戻してもらえるだけじゃなく、契約まで?

取引先の男「もちのろんさっ。ビールを水のように飲むオレに、智紀ちゃん勝てるかな?」
・・・見た感じ、炭酸入りのジュースみたいだけど、でも、それはビールも同じ。
もし勝てれば一気に3億の契約を成立できるかも。
飲み会の席だから、後で撤回されるかもしれないけど、負い目くらいは持ってもらえる。
あとはこちらの商品の利を攻めれば契約までこぎつけるはず。
よしっ。

智紀「その一気飲み大会、受けます。」
取引先の男「よーし、じゃあ先に目の前の飲み物、三杯飲んだ方が勝ちだっ。」
智紀「はいっ。」
勝てれば契約、負けてもデメリットはない。
必ず勝つっ。

取引先の男「よーい始めっ。」
智紀「えっ?」
突然はじめられた。く・・出遅れたけど、文句言う時間があったら一秒でも早く飲んだ方がいい。

ゴクッゴクッゴクッ。
甘くておいしい。
小さく砕かれた氷が入ってて冷たい。飲みやすくていいな。

いっき、いっき、いっき・・。
周りの人たちが場を盛り上げる。

取引先の男「ぷはー。一杯目ごちーーー。」
え?早いっ。
最初出遅れたのが痛かった。

取引先の男「ちょっと口の周りをふきふき。」
あ・・チャンスっ。
ゴクッゴクッゴクッゴクッ・・。

智紀「はぁ、はぁ、はぁ。これで同じです。」
ちょっと急ぎすぎて、呼吸が乱れてしまいました。
でもこれで勝負は振り出し。残り二杯っ。

向こうがまだ二杯目に手をつけてない今、追い抜くチャンスです。
二杯目のコップに手を伸ばし、飲み始める。

ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッ・・ちょっと苦しいです。
でも三杯飲めば、契約が。ここはがんばりどきです。

智紀「はぁ、はぁ・・二杯目完了。」
取引先の男「おーがんばってんなぁ。オレもこれから三杯目なんだ。」
え・・?いつの間にか二杯目飲み終えてる・・。
あ、あれ?ちょっと頭がふらふらしてきた。
お酒のにおいにちょっと酔っちゃった?

取引先の男「よーし、三杯目いっくぞー。」
負けられないっ。
ちょっとふらふらしながら、三杯目を飲み始めた。

ゴクッゴクッゴクッゴクッ・・。
横目で相手の様子を見ると、すごい勢いでコップからビールが無くなってる。
だめっ、追いつかないっ。

そして・・

取引先の男「ぷふぁー、いやぁ残念だったねぇ。いい勝負だったんだけどなぁ。」
負けた・・最初から向こうは自信があったんだ。
実際だいぶ手加減されてた。

それにしても、なんだか酔ってきたみたい・・においだけでここまでふらつくの・・?
取引先の男「智紀ちゃん疲れた?少し休む?」
智紀「あ・・でも、それじゃあ・・。」
取引先の男「智紀ちゃんがんばったもんね。契約については考えておくよ。だから少し横になってていいから。」
智紀「・・・・ありがとうございます・・少しだけ休ませていただきます。」
あたしは横になる・・頭が熱くなってきてるのがわかる。
もしかして、風邪なのかな?
他の人たちに迷惑・・かけたら・・悪いよ・・。

・・
・・・・
・・・・・・

ん・・あれ?ここは・・。

取引先の男「起きたか。おはよう智紀ちゃん。」
後ろから声が聞こえる・・え・・?
智紀「きゃあああああっ、な、なにしてるんですかっ?」
あ、あれ?身体が動かない・・。
それに、ここはどこ?飲み屋じゃない、だれかの部屋?

取引先の男「いやぁ揉みごたえのあるいい胸してると思ったからね、つい揉んじゃった。」
智紀「つい、でそんなことするわけないでしょう。やめてくださいっ。」
取引先の男「柔らかいねぇ。それにハリがあって揉み心地は最高だ。文句なし。」
智紀「そんなことどうでもいいですから、いいかげんにして下さい。」
取引先の男「わかったわかった。いい加減で揉んであげるからね。」
智紀「その”かげん”じゃないです。」
どうして身体が動かないんだろう。

紫伎

男「いいねえ、興奮して来たよ。」
バスタオルを持った・・お風呂あがりなのだろう、裸で男が部屋に入ってきた。
智紀「確か、飲み会に来てた・・。」
取引先の男「実は彼の要望でね、智紀ちゃんに一目ぼれしたみたいなんだ。」
男「オレの童貞を、智紀ちゃんで卒業しようと思ってね。」
気持ち悪い。なにこの人?

取引先の男「じゃあ早速筆おろししましょうか。」
男「そうですな、もう我慢できなさそうですし。」
そういう男のものは、ギンギンにたっていた。
この人達、あたしを物かなにかと勘違いしてない?

こんなこと、許されるわけないのに。
男「そんな見つめられると、な、なんか照れるな。」
見つめてるんじゃなくて、睨んでるんです。

取引先の男「ならいい案がありますよ。」
男「ほほぉ、それは助かります。」

・・・・

男「お、お、お、入ってく・・これで、これでオレの童貞が・・。」
取引先の男「もう少しですよ。さ、一気に入れちゃってください。」
男「ああ、んっ。」
智紀「あ、痛ぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ。」

男「お、おい、血が出てるぞ。変なとこに入ったんじゃないか?」
取引先の男「落ち着いてください。智紀ちゃんも初めてだったんですよ。」
男「初めて・・マジか?オレが智紀ちゃんの処女ゲット?」
取引先の男「そうですよ。よかったですね。」
男「彼氏いるって聞いたから、ゆるゆるかと思ったけど、初めてか・・やべ、興奮してきた。」
取引先の男「たくさん気持ちよくなってください。きっと思い出深いものになりますよ。さて、オレも参加させてもらいますか。」
んんっ。口にまで・・入れられた。

男「はぁはぁ、前も後ろもチンコだらけだ。うほっ、いいぞいいぞ。」
取引先の男「気に入っていただけたようで。」
男「ああ、マジ最高。これならそっちの話も・・くっ、乗っても・・お、おおおおっっっ・・。」
ドクッドクッドクッドクッドクッドクッ。

智紀「んんんんんんんんっっ。」
いやぁ・・中に・・出された・・・・。

男「おー、搾りとられる。」
取引先の男「へへへ、じゃあオレも・・出すぞっ。」
ドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッ・・。

智紀「んんんんんんんんんんんっっっ。」

紫伎

男「おお、智紀ちゃんの中に精子が・・。」
取引先の男「へへ、もう一回しますか?」
男「ちょっと休ませてもらえないか?年をとると連続は難しくてな。」
取引先の男「あーそでも今日は帰さないといけないんで。」
男「えーそうなのか?んー、まあいいか。じゃあ明日はうちの会社に来てもらおうか。」
取引先の男「わかりました。後はこちらにおまかせください。」
ああ、頼んだぞ。と言い、男は部屋を出ていった。

取引先の男「だってさ。聞いた?智紀ちゃんには明日行ってもらうとこあるから。」
智紀「・・・・何を勝手な・・行くわけないでしょう?」
取引先の男「彼氏に知られてもいいの?」
智紀「あ、あの人ならわかってくれます。」
取引先の男「そうかなぁ?その彼氏、最近他の女性といい感じじゃないか。」
智紀「どうしてそれを・・。」

取引先の男「まあいいじゃないか。そんなことより、向こうの女性も彼氏くんを狙ってると思うんだが・・このこと知られてもキミと一緒にいるのかな?」
智紀「・・・」
取引先の男「オレの言うこと聞いてればこのことは言わないさ。仕事の失敗も挽回できる。いいことだらけだろう?」
そんなことない。
でも、確かに今このことを溜木に言われたら・・。

今は言うことを聞いておこう。
その間に溜木との関係を強化しておこう。反撃はその後だ。

取引先の男「な、悪い話じゃないだろう?」
智紀「・・わかったわ。とりあえず、言うことを聞いておくわ。」
取引先の男「にや・・。そうだろう、お互い仲良くしような。」

あたしはこいつのこの気持ち悪い顔を忘れない。
必ず反撃してみせる。必ず・・。

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